地球環境問題(1)

先日、ある研究所から講演を頼まれ、少しだけ、地球環境問題に関心を持ったので、勉強したこと、考えたことを備忘録として書き留めておきます。最近は宇宙環境の問題もクローズアップされています。宇宙のデブリ(ゴミ)を監視するため、2020年5月、航空自衛隊に宇宙作戦隊(うちゅうさくせんたい)が新編されました。

■環境問題とは

環境問題とは、人間が生存・生活していくための空間や事物などが好ましくない方向に変化していく問題です。日常生活に支障を来し、生命にかかわることもあります。この環境問題が世界的に注目されてきたのは1970年代からです。1960年代、世界では先進国による工業化や都市化が盛んに進んでいました。その結果、経済が発展してきた一方で、大気汚染や水質汚濁などの公害が発生したのです。

地球サミットは1992年以降、10年ごとに開催され、環境問題に対する数々の対策が議論されてきました。1997年の気候変動枠組み条約第三回締結国会議(京都議定書)では、温室効果ガス(メタン、フロンガス、二酸化炭素)の総排出量を削減しようという取り決めがなされました。

近年よく聞かれるSDGs(持続可能な開発目標)も2012年の地球サミットで議論が始まり、2015年9月の国連サミットで採択されました。SDGsは社会・経済・環境(ESG)の3つを主軸とし、持続的な開発を目的とする世界共通言語となりました。内容は貧困や雇用、気候変動などの環境・社会問題を解決するための17の目標と169のターゲットで構成されています。

地球環境問題はいくつかありますが、中でも人口爆発と地球温暖化の問題が良く議論されている気がします。人口爆発は人為的な問題ですが、地球温暖化は人為か、自然発生かという議論もあるようです。自然発生とすれば、地震などと同じく純粋な環境問題とは言えなくなりますが、後述のように温室効果ガスという人為的な原因によって温暖化に向かっているという仮説があって、今日は環境問題の中心的議題になっています。

■人口爆発

 「人口爆発」とは、劇的な勢いで人口が増加する状態のことです。国連が発表した「世界人口推計2019年版」によれば、世界の総人口は2019年時点で77億人のところ、2030年には85億人、2050年には97億人、2100年までには109億人に達すると見込まれています。

 人口爆発の主な原因は、先進国のニーズに従い後進国が資源や各種作物(コーヒー・バナナ・小麦・ダイヤモンドなど)を輸出し、手元にお金が入ったことで食糧の供給量が増したためといわれています。さらに生産拡大に向けて人口の増加が促され、人口爆発に拍車をかけているのです。

 だから、人口爆発はアフリカ、アジアの発展途上国で発生しています。他方、先進国ではわが国にみられるように人口は減少傾向にあり、これは「少子高齢化」という政治、社会問題を引き起こしています。

■人口爆発がもたらす負の影響とは

 人口は国力の重大な要素ですが、大きければ大きいほど良いというものではありません。その年齢構成が重要です。「人口ボーナス」とは、総人口 に占める働く人の割合が上昇し、 経済成長 が促進されることを指します。つまり、「子どもと高齢者の数に比べ、働く世代の割合が増えていくことによって、豊富な労働力が経済活動を活発にし、稼いだお金の多くを、子どもの教育や高齢者の福祉より、新しいビジネスに回すことができる」(2013-02-25 朝日新聞 朝刊 1総合)ということになります。

 これに対して、経済成長を妨げることを 人口オーナス ( onus )と言います。少子高齢化の進む日本では、働く人よりも支えられる人が多くなっています。このため、労働力人口の減少や引退世代の増加により長期的な成長力が低下したり、働く世代が引退世代を支える社会保障制度の維持が困難になったりすることなどが指摘されています。

 このほか、人口爆発は食料、環境面での懸念をもたらします。つまり、2050年には100億人近くの食糧が確保できるのか、地球の収容能力を超えて環境悪化と地球温暖化に拍車をかけるのではないか、人口密度が高まることで紛争が増大するのではないか、などの懸念が生じます。

 ただし、過去の統計からは人口が増加したからといって政治暴力は増大していません。むしろ21世紀の最初の10年では、大幅な人口増に対して、紛争は半減しています。地球温暖化についても、単に人口増→温室効果ガスの排出増という単純な構造ではありません。食料の問題についても、バイオ技術の発達などによって食糧危機を回避できるかもしれません。

 要するに、人口増の問題は国際社会が適切に管理していけば良いのですが、都市への人口集中、国境を超えた移民の流出入など、管理が困難な問題が部分的、局地的に起こることは回避できません。

■地球温暖化と異常気象

 地球温暖化は、地球規模で気温が上昇し、気候が変動することです。これにより、気候の大幅な変動が生じ、異常気象の頻発や高潮による洪水、干ばつによる農業の停滞、食糧不足など甚大な影響が起きると懸念されています。

 気候変動によって紛争や戦争が起きるとの説もあります。2010年頃からののアラブの春、シリアの戦争も異常気象が原因と言われています。2010年には、干ばつで打撃を受けたロシアが穀物の輸出を停止、それが食糧の高騰を招き「アラブの春」の要因となったというのです。英紙『フィナンシャル・タイムズ』は2007年から翌年にかけての穀物価格上昇で、ハイチからバングラデシュまで30もの途上国で騒乱が起きたことを取り上げています。

 ただし、地球温暖化の原因、地球温暖化と異常気象の因果関係、さらには異常気象と紛争の因果関係については明らかではないというのが実情です。

■水不足がもたらす局地的な紛争 

 地球温暖化、砂漠化によって水不足が生じたり、水害対策で上流の雨を流せば下流が被害を受けるということもあります。

 2030年には世界の水の需要量が供給量を40%上回るとの予想があります。今後、水不足が予想される地域としては、アルゼンチン、ブラジル、パラグアイに跨る国境地帯、アルゼンチンとウルグアイの国境地帯などがあげられます。これらの水を狙って関係国の紛争、戦争に発展するかもしれないのです。

 英国紙『ガーディアン』の記事で、世界銀行が今後の水不足が「世界経済への打撃になる」ということを発表しています。

 具体的には、2050年までに中東は水不足による原因で GDP が 14%落ちる、中央アジアでは GDP が 11%落ちる、東アジアでも、旧態依然の水の管理体制のままの場合、 GDP が 7%削ぎ落とされる可能性がある、深刻な水不足は、東アフリカ、北アフリカ、中央アジア、南アジアの一部で発生することが予測される、北米とヨーロッパでは深刻な水不足の予測はない、などと予想しています。

 水紛争では、「コチャバンバ水紛争」が有名です。これは、1999年から2000年4月にかけてボリビアのコチャバンバで発生しました。水道事業の民営化と水道料金の値上げに対して市民が起こした反対運動です。2000年4月6日からの大規模な暴動では、都市機能が麻痺し、国際連合開発計画の報告によれば、数十人が負傷、6人が死亡したとされます。

 リオ・グランデ川やインダス川では水を巡っての紛争が起きています。さらに、これから紛争の勃発が予想される地域は、ナイル川、チグリス・ユーフラテス川、ガンジス川などがあげられます。

 ナイル川では上流のエチオピアがダムを建設して、それに対して下流のエジプトが反対しています。また、2020年6月、中国とインドの国境衝突により、死者が出ましたが、その原因が水紛争であるといいます。この地域(カシミール地方のラダック州のガルワン渓谷)では、インダス川の水資源を争うパキスタンとインドの歴史的対立もみられました。

■中国が絡む水紛争

 中国が関係するものとしては、ブラマストラ川、メコン川に絡む水紛争が有名です。2017年、ブラマストラ川の汚染で、バングラデシュの漁猟に影響が出ましたが、中国が上流で汚染物質を投棄したとの未確認情報も噂されました。

 中国は「南水北調」と言って、南部地域の水を北部地域に送り、慢性的な水不足解消を目指すプロジェクトを2002年12月に着工しました。中央ルート第1期工事が2014年12月に完成しました。全完成は2050年頃になる予定です。

 これは揚子江の水を引くという構想ですが、国際下線のブラマプトラ川から引くという話もあります。そうなると、国際紛争に発展しかねません。

 中国は電力供給などのためにメコン川に13のダムを建設しています。河野太郎元外相は2019年8月3日、タイ、ベトナムなどメコン川流域5カ国との外相会議をタイの首都バンコクで開き、5カ国の地域協力の枠組みである「経済協力戦略会議(ACMECS)」へのインフラ整備を含む開発パートナーに日本が参画することで合意しました。

 この数日前の7月31日、、東南アジア諸国連合(ASEAN)と中国との外相会議がバンコクで開かれました。米国のポンペオ国務長官が7月31日、関連会合で、「中国はダム建設を通じてメコン川の流れを支配しようとしている」「下流の水の流れをコントロールしている」などと中国を批判しました。

 タイ・ラオス国境地帯では、ダム建設前とくらべて漁獲量が減っている、タイの穀倉地帯では水不足が深刻になっている、ベトナムでは、川の水位が下がり海水が逆流する現象も起き、そのため淡水養殖場の魚が大量死しなどの報告もあります。

 四川大地震の後、中国は雨による2次災害を恐れ、ダムを開き放水したことで、2009年夏のメコン川流域の洪水が発生したとの報告もあります。

 前出のエチオピアでの大規模なダム建設も、ここのタービンなどの施設は中国製であるとされ、中国は直接、間接的に水の問題に関係しているとの指摘があります。

 

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