情報戦(1)

ハイブリッド戦、マルチドメイン戦(MOD)、超限戦、など現在の軍事戦略を語る用語が注目されています。この頃、私が読んだ本だけでも、『近未来戦を決するマルチドメイン戦』、『現代戦争論-超「超限戦」』、『シャドー・ウォー』、『ハイブリッド戦争』、『ハイブリッド戦争の時代』などを挙げることができます。

これらの本はいずれも、軍事という視点から現在の国際情勢を見る上で有用な本です。読む価値は大いにあります。

さてハイブリッド戦争やマルチドメイン戦など、それぞれの著者が定義していますし、欧米の研究者あるいは権威者によって定義の試みが行われています。たしかに、これらの戦いにおける国際社会での同盟や協調によるグローバルな対策のためにハイブリッド戦の定義や、それとマルチドメイン戦との用語の違いなどを認識する必要はあるでしょう。

しかしながら、国家独自の防衛態勢の強化や、企業における情報漏洩などの対策を論じる上では、まずは、宇宙、サイバー、電磁波を利用した戦い方の様相や今日の我々に向けられた脅威やリスクなどを感覚的であっても、より具体的にに理解することがより重要なのではないかと思います。

さらに、私のような情報分析という実務に長年携わったきたものからすれば、やはり、日本あるいは海外の在留邦人の方々が、いかなる状況下で、どのような脅威やリスクあるいは危機が現出しているか特定し、どのような対応を考慮すべきか、ということに関心があります。

その意味では、上記の本だけでは、組織や個人として、今日の脅威をどのように認識し、リスクや危機の特定をしていくのか、つまり、判断や行動を促す視点とインテリジェンスの視点からは必ずしも十分な満足感は得られません。

私は、現代の戦争が変わったのかどうか問われれば、よくわかりません。たしかにICTが戦いの様相に変化を与えており、現代の戦争は第一次大戦時の総力戦とは異なります。他方、さまざまな戦い方をミックスした戦いや、戦いが平時、グレーゾーンから始まるという点では、特に現代戦も第一次世界大戦も異なりません。つまり、何がどのように異なるのか、それは本質的な違いなのか、それがどの主体レベルにどのような意味を持つのかが、よくわかりません。

現在、ハイブリッド戦争の中でとくに注目されているのが、サイバー戦、電子戦、インターネット上でのSNSを活用したマイクロターゲティングや偽情報の流布、宇宙ベースの情報支援能力の獲得などでしょう。

とりわけ、サイバー戦が注目されていますが、私は1999年に調査学校で学んでいた時に、「『21世紀の戦争』-コンピュータが買える戦場と兵器」を読み、驚愕した覚えがあります。これは当時の調査学校長による課題図書であり、読後感想文が求められましたので、よく覚えいます。

また、ちょうどこの頃、中国では『超限戦』という本が出ました。私は中国研究を始めたばかりであったので、非常に関心を持ちました。また、著名な軍事評論家の江畑謙介氏はサイバー戦の本をいくつか出し、注目されました。これらの本は現代の本にまったく遜色がない、むしろ凌駕していると私は思います。

あれから20年経ちました。私にとってのあの頃の戦争認識と現代の戦争認識はどう変わったのかと問われれば、「何も変わっていない」というしかありません。サイバー戦に再び大国間競争の要素が加わったという面もありますが、それは歴史の回帰と螺旋的発展で説明がつきます。

我々は少しずつの変化にはなかなか注目しません。しかし変化はすでにおきていたし、ある種の専門家たちはしっかりと予測していました。かりに現代のハイブリッド脅威を驚くとすれば、そのような予測を重視しなかったからです。

そして、国家行政もすぐにいろいろな対策は打てません。ハイブリッドだ、グレーゾーンだと騒がれていますが、防衛におけるグレーゾーンの脅威は1990年代から注目されています。要するに、中国の脅威などが大きくなり、ロシアが復活し、国際社会が注目する、ハイブリッドという絶妙な名前を当てる。あるいは米国などがハイブリッド脅威を問題視するようになって、機が熟するようになり、やっと対応を起こすということが一般的なのだと思います。

むろん、機が熟するようになり、上記の良書が生まれたことは、わが国の国家や組織にとって良いことです。ただし、私は現代の戦争論のような内容はすでに20年前に述べられており、想定外はないと思います。逆に現代社会ではすでに20年先の戦争の様相の兆候が出ていると思います。AIや知能などでしょうが、私には不得意な領域なのでうまく解説はできません。

逆に、現代のようなハイブリッド戦の兆候は相当以前から起きていたことを『21世紀の戦争』や何十年も前に書かれた著書を紐解きながら、情報戦に焦点を当てて、私が考えたこと、思っていることを、このブログに時々書いていきたいと考えています。

(次回に続く)

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