SSNと民主主義について思う(2)

■サイコグラフィック(心理学的属性)の政治活用

SNS上の情報はマーケティングや販売戦略、日々の利便性の向上などに役立てられ、豊かな社会生活や発展に欠かせないファクターとなっています。しかし、物事には必ず、光と影があるように、デジタル・テクノロジーの発展には常に危険性があります。

マーケティング戦略が政治の世界でも活用されるようになってます。つまり、サイコグラフィックにより民衆の心理的要因を把握して、特定有権者の投票率を高める、さらにはスキャンダルなどを流して特定候補へ肩入れさせるなどが行われているとみられています。

このようなことが知らず知らずに行われているとすれば、民主主義の基本に反しますし、何よりも、我々の個人情報が一部特定企業などにより把握され、心理的要因までをコントロールされているとすれば不気味です。同企業を経由して個人情報が政府機関に渡り、国民監視という問題も引き起こしかねません。

政治には宣伝(プロバガンダ)はつきものです。第一次世界大戦後に台頭したナチスドイツは宣伝省を設置し、ゲッペルスによる巧妙な宣伝工作によって大衆人気を獲得しました。わが国でも太平洋戦争中、大本営による一方的な勝利発表が行われ、それを大手メディアが追随して国民に報道し、戦争鼓舞がはかられました。

現代でもマスメディアによる情報宣伝が政治に影響しています。1991年の湾岸戦争では、米国はイラクのフセイン政権の極悪非道振りを宣伝し、一方では民間目標を避けた軍事施設へのピンポイン攻撃で「きれいな戦争」を演出して、国際大義を得ました。

1999年のボスニア紛争では、ボスニアやコソボのイスラム系住民が、対立するセルビア人から一方的に迫害、虐殺され「民族が浄化された」という報道が主力欧米メディアを通じて流れました。この時、「民族浄化」というキーワードが注目されましたが、これはボスニア外相が、ある米国のPR会社に依頼した「情報戦略」だったということです(NHKスペシャル「民族浄化 ユーゴ・情報戦の内幕」)

ただし、2000年代以前には、現在のようなSNS(交流サイト)を通じた情報ツールは存在せず、ましてやフェイク・ニュースなどの概念も存在しませんでした。それにもかかわらず、一つの民間PR会社により、ある特定の側(セルビア側)を世界的に孤立させる情報操作は見事に成功したわけです。

このように我々はマスメディアの報道によって意思決定上のさまざまな影響を受けています。知らず知らずに偽情報に踊らされ、情報統制によって国家が望む方向に世論誘導されている側面もあるようです。

■ソーシャルメディア(SNS)の登場

2000年代以降、SNSが登場しました。これを通じて民主化デモなどの呼びかけが行われるようになりました。

2000年代初頭の東欧、中央アジアで起きた「カラー革命」と2010年代初頭に起きた「アラブの春」(※)は、共に発達したメディア環境の影響を受けました。ただし、「カラー革命」とは異なり、「アラブの春」においては動員の呼びかけに匿名性の高いツイッター、フェイスブックといったSNSが用いられたとされます。(※※)。

この二つのSNSは米国企業の運営によるものでそれぞれ2004年、2006年に開設されました。

米国の歴代政権においては、2008年、大統領選挙で人気上昇中だった民主党候補のバクラ・オバマ氏がSNSの活用を重視します。

ヒラリー・クリントン氏をはじめ、他候補もウェブサイトを持っていましたが、従来型の選挙広告に特化しました。しかし、対照的にオバマ陣営のウェブサイトは草の根団体向けのプラットフォームとして機能し、投票促進運動を盛り上げました。つまり、オバマ政権以後、政治の世界にSNSが浸透するようになりました。

世界の人口の約3割がソーシャルメディアユーザーで22億人ともいわれます。米国ではソーシャルメディアを通じてニュースを取る人の割合は6割。つまり、CNNよりも Facebook(FB)を見る国民が多いのです。

2012年の米大統領選挙では、フェイスブックが影響したとされます。Facebookに、「私は投票した」と投稿することによって34万人の投票者数が増えたといいます。

2000年の米大統領選挙では、ジョージ・W・ブッシュ氏とアル・ゴア氏とのフロリダ州の獲得投票は最終の結果は、わずか537票差でした。2012年の選挙ではフロリダ州は民主党有利でした。だから、Facebookに私は投票したと言う投稿があれば、民主党に大きく味方します。ここにSNSを選挙戦に活用するという発想がより現実化を帯びました。

2016年の大統領選挙では、ロシアによる情報戦と英国データ分析会社(ケンブリッジ・アナリティカ、CA)のマーケティングが影響したとされています。ただし、CAのマーケティングの効果を疑問視する声も依然としてあります。

トランプ氏は投票日の未明、中西部ミシガン州(グランドラピッズ)で最後の選挙演説を行いました。彼は、雇用回復、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)離脱などを強調しました。結果、1988年を最後に共和党候補が勝っていなかった同州で、1万704票差でクリントン氏に勝利しました。トランプ氏は選挙当選後、「大統領選の勝利はフェイスブックとツイッターのおかげだ」と米CBSテレビに語りました。

(※) 2010年12月のジャスミン革命は、チュニジア中部の町において失業中だった若者(26歳男性)が、果物や野菜を街頭で販売し始めたところ、販売の許可がないとして警察が商品を没収。若者はこれに抗議するため焼身自殺を図った。この事件が若者を中心に、職の権利、発言の自由化などを求めて全国各地でストライキやデモを起こすきっかけになった。

(※※)ただし、これら二つのSNSの普及率は高くなく、「アイ・レボルト(I-Revolt)」と呼ばれる彼ら独自の簡単なアプリケーションの使用、A4サイズのチラシ、毎週金曜日の祈りの習慣が動員に主たる要因であるとの分析もある。

次回は、CAが関与したとされる選挙工作の実態を見てみましょう。

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