沢尻容疑者の逮捕は、政府の陰謀?

沢尻エリカ容疑者の逮捕で、「桜を見る会」から衆目を逸らすためだという説が有識者や芸能人から起きているようです。

いつも、このような突発的な事件(捜査関係者からすれば計画的捜査?)が起きると、いわゆる“陰謀論”が沸き起こります。 「桜を見る会」と沢尻容疑者逮捕とに因果関係があったのかどうかは定かではありませんが、野党などに追及されていた困窮していた安倍政権にとって、この逮捕は“渡りに船”であったのかもしれません。

このように想像力を駆使して物事をつなげて見ることは重要です。2001年の9.11事件の前に複数の事前兆候がありました。しかし、これらの有力な兆候を個別の点として見るだけで、線を描けなかったことから、9.11事件が予測できなかったとされます。すなわち、想像力が欠如したとの反省がなされました。

ぎゃくに2003年のイラク戦争では、イラクのフセイン大統領が大量破壊兵器を保有していないにもかかわらず、保有していると決めつけて、米国はイラクを攻撃しました。 これは過去にイラクが大量破壊兵器を持っていたという事実、ドイツと米国の関係者から「カーブボール」というコードネームをつけられたイラク人科学者の情報を有力視して、当時のパウエル国務長官が、イラクは大量破壊兵器を持っていると判断したわけです。 のちに「カーブボール」はフセイン大統領を失脚させたいために嘘を言ったことを自供しました。

このように、時機をとらえた人の発言にはさまざまな意図が含まれている場合が多々あるので注意が必要です。 冒頭の発言を行った芸能人たちが何らかの意図をもって発言したのか、それとも純粋に思ったことを発したのかはわかりません。

しかし、影響力のある人の発言を我々はある種のバイアスをもって受け取ることになるので注意が必要です。この場合は、逮捕事件がなぜ起きたのかを自分自身が納得したいがために、そこに因果関係をむりむり探すことがよくあります。 そこで、桜を見る会で困窮している安倍政権と、安倍政権が国民の目をそらすために逮捕劇を仕組んだという、分かりやすい構図が提示されると、このような論理を短絡的に受け入れる「因果関係バイアス」が生じる可能性があります。

また影響力のある人が発言すると、それが大量に伝播・流布し、その情報が氾濫し、その他の情報に目が届かなくなります。 そこで目先の利用しやすい情報ばかりによって仮説を立てることになります。これを「利用可能バイアス」といいます。

さらには安倍政権の支持率を下げたいと思う側は、安倍政権による“陰謀説”に容易に飛びついて、これを批判ネタにできると考える傾向にあります。これを希望的観測といいます。

このように、さまざまなバイアスの存在が、物事の真実を見る目を曇らすしてしまうのです。よくよく注意が必要です。

なお、バイアスについて本格的に研究したい方は心理学の本を読むのが良ろしいでしょうが、拙著『武器になる情報分析力』でも一部の事例を挙げて紹介していますので、よろしければご参考ください。

投稿者:

atsumori

元防衛省情報分析官。1960年広島県生まれ。退職後、ほそぼそとインテリジェンス・リテラシーの普及活動を開始。著書、『情報戦と女性スパイ』『中国戦略“悪”の教科書』、『中国が仕掛けるインテリジェンス戦争』、『戦略的インテリジェンス入門』など。その他、講演、雑誌投稿など。

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