新著が好評
筆者の新著『武器になる情報分析力』が、発売されてⅠか月以上がたちますが、おおむね「アマゾン軍事ランキングの10位以内につけています。
『武器になる情報分析力』
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メルマガ「軍事情報」寄稿者の石原ヒロアキさんの『漫画クラウゼヴィッツと戦争論』(清水多吉監修)とともに、ご愛読のほどよろしくお願いします。
『漫画クラウゼヴィッツと戦争論』
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バタフライ効果とは?
さて、軍事ランキングが上位を維持することは本自体の魅力もさることながら、その急上昇には原因があります。著名な方が著書紹介ブログを書いてくださる、出版社などからの新聞広告が掲載されるなどです。つまり、そこに原因と結果の関係があります。
2019年6月28日から29日に行われた大阪G20明けの株価が上昇しました。これは簡単ですね。米中両首脳が貿易協議の再開をさせることで合意したことが原因となり、結果として株価が上昇しました。
でも、世の中には原因と結果が容易にわからないものがあります。皆さんは、「バタフライ効果」をご存じですか?
これは、「ブラジルで蝶の羽ばたきはテキサスでトルネードを引き起こすか?」というもので、非常に些細な小さなことが、さまざまな要因を引き起こし、だんだんと大きな現象へと変化することを指す言葉です。日本の「風吹けば桶屋屋が儲かる」という諺のようなものです。
実際には、蝶の羽ばたきとトルネードとの因果関係はありませんが、ちょっとしたことが、のちに大きなことを引き起こすことは多々あります。
そのちょっとしたことを重大事項の兆候として感知できるかどうか、つまり、その兆候が単なる一過性の事象ではなく、大きなトレンドの上に成り立つ事象であって、他に影響を及ぼす「ドライビングフォース」となり得るかどうかを見極めることが重要です。
エルニーニュ現象の影響とは?
1972年にチリの沖合でエルニーニョ現象が発生しました。さてわが国では何が起こったでしょうか?
実は豆腐が値上がりしたのです。
つまり、エルニーニョという海流の変化でカタクチイワシが捕れなくなった。それまでカタクチイワシは鳥や家畜の餌になっていた。それがなくなったので大豆を買う。それで日本への大豆の輸入が減って、豆腐が値上がりをしたのです。
仮に、この因果関係にいち早く気づいたとすれば、株や先物取引でで大儲けができたかもしれません。物事を広く知っている、一片の兆候が何に影響しているか、何を引き起こすのかなど想像的に考える習慣を身につけると、困難といわれる未来予測の精度がほんの少し上がる。このほんの少しが、他の人をリードするのではないでしょうか。
米国において「なぜ犯罪率は減ったのか?
『武器になる情報分析力』では、1990年代初頭の米国において「なぜ犯罪率は減ったのか?」という問題を扱っています。
この話は以前の本ブログ「因果関係は意外なところに!」で取り上げましたが、ここでもう一度同記事を抜粋します。
1990年代初頭の米国の事例をあげましょう。当時の米国では過去10年間、犯罪を増える一方でありました。専門家は、今後はこれよりも状況は悪くなると予測しました。しかし、実際には犯罪が増え続けるどころかぎゃくに減り始めてしまったのです。すなわち、未来予測を誤ってしまったのです。
「なぜ犯罪率は減ったのか?」という質問に対して、「割れ窓理論」に基づく警察力の増加や厳罰化、銃規制、高景気による犯罪の減少などの仮説があがりました。 しかし、そのような対策を行っていないところでも犯罪は減ったのです。
そこで調査したところ、予想もしなかった因果関係が明らかになったのです。それは「中絶の合法化」でした。 この因果関係を簡略化して示すと次のとおりです。貧しい家庭→未婚の女性の妊娠・出産が増加→貧困による子育て放棄、虐待、教育放棄→未成年者が犯罪予備軍→犯罪の増加でした。
当時の米国では長らく妊娠中絶は違法でした。 しかし、米国では1960年以降、性の解放の観点から、シングルマザーや中絶も1つの選択肢とされました。そして、歴史的に有名な1973年の「ロー対ウェイド判決」で、最高裁は7対2で憲法第14条に基づき、中絶禁止を憲法違反であると判定しました。 すなわち人工中絶法が設定されたのです。
つまり、この時期以降、貧しい未婚家庭に育った妊娠女性が子供を産まなかっくてもよくなったのです。その結果、1990年代に若者の犯罪予備軍が減り、犯罪率が減り始めたのです。
常日頃から問題意識をもって観察力を磨く、本質を見抜く洞察力を鍛えることで、真の原因を探り、そして近未来予測が少しばかり可能になるということではないでしょうか。