東アジア情勢の基本構造をみる

最近は、東アジアをめぐる情勢が一段ときな臭くなってきました。

クロノロジーにしてみますと、以下のとおりです。

7/23 ロシア機が韓国竹島の領空侵犯、中露初の合同監視訓練の実施      

7/24 中国「国防白書」発表。米国を激しく批判、尖閣を固有領土と発表するも対日批判は抑制的、台湾統一のための武力行使は放棄せず           

7/25 北朝鮮、ミサイル発射                        

7/26 韓国大統領府、米韓合同演習中止せずと発表             

7/28 北朝鮮、対南宣伝サイト「わが民族同志」で、日韓の軍事 情報包括保護協定(GSOMIA)破棄を韓国に要求

8/1トランプ米大統領、北朝鮮の弾道ミサイル発射試験について、「(短距離なら)問題ない」と述べた 

8/2北朝鮮、日本海に向けて飛翔体2発発射

8/2トランプ米大統領、北朝鮮のミサイル発射に対し、米朝首脳会談の合意に違反せずとの見解を提示

8/5米韓合同演習開始

8/6北朝鮮が日本海に向けて正体不明のミサイル2発を発射

8/9トランプ米大統領、日韓首脳をやゆ、金正恩委員長との関係を誇示

8/10北朝鮮短距離弾道ミサイル2発を発射したと発表。ロシア製「イスカンデル」の北朝鮮版「KN23ミサイルの可能性」

以上のようなことから、米韓合同軍事演習に対して北朝鮮がさかんにミサイルを発射して牽制、トランプ米大統領は金正恩を刺激してこれまでの非核化の成果が水泡に帰さないよう配慮、米大統領は日韓対立を懸念して両国を牽制、日韓は北朝鮮に対する非難もできず、といった状況でしょう。

さらに、その下部構造に目を向けますと、中国、ロシア、北朝鮮が連携して、 米日韓の政治的、軍事的離間工作に着手しているように状況もかいまみれます。こうした背景には、米トランプ政権が発動した米中経済戦争、 日米安保の不公平発言、日韓の徴用工および半導体関連資源輸出規制などをめぐる対立、米朝の非核化交渉への停滞と経済苦境に苦しむ北朝鮮の内情、韓国の経済失速と国内の政権批判の高まり、 中ロのそれぞれの国内事情などが複雑に入り組んでいます。  

こうした複雑な情勢においては、さらに下部構造となる、東アジアの基本構造を押さえておくことが重要 です。まず、(1)中ロは対米において協調するが、長い国境線を接し、中央アジア等の利害対立から同盟関係には至 らない、(2)中ロ米はいずれも朝鮮半島の安定を当面は最優先してい る(変わる可能性もあるが、それはまだ見えていない)、(3)米中は経済相互依存関係から決定的な対立を回避する、とういうものです。

(3)については、最近になって「米中対立は避けられない」を 主張する書籍の出版や専門家の発言が増加しており、意見の分かれるところです。ただし、近代の歴史からみると、米国は中国と直接戦争したこともうありませんし、大戦後にお いてもさまざな対立はありますが決定的な対立を回避してきました。  

つまり、米中関係は波乱や紆余曲折がありましたが、経済のグローバル化などが要因となり、概して安定的に維持されてきたのです。筆者は現段階では、米中対立のシナリオよりも、摩擦を繰り返しながらも対立を回避するシナリオの蓋然性がやや高いと判断します。  

長期的にみれば、ロシアおよび米国との対立を上手に回避した中国はますます強大な存在になる可能性があります。そして、ロシアは人口減少などから影響力が低下して、日本も人口問題等から衰退する傾向が大との見方が一般的です。さらに米国はアジアから後退する可能性もあるということです。

このような基本構造を劇的に変化させるとすれば、やはり北朝鮮の核問題です。北朝鮮は2016年頃から核実験とミサイルを発射を繰り返し、あわや米朝軍事衝突かと懸念されました。しかし、今は2016年以前の情勢に後戻りした感があります。ただし、決定的に違うのは、北朝鮮の核ミサイル能力が格段に向上し、事実上、北朝鮮を核保有国として扱うような既成事実が生じている点です。

われわれは、基本構造、すなわちメガパワーとゲームチェンジャーが何かという視点で国際情勢を見て、わが国の国家戦略や政策の妥当性を判断していかなければならないと思います。

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