インテリジェンス思考術(第15回)

情報を収集し、整理する

――「集める」前に、何を集めるかを決めよ

これまで、情報分析では最初に枠組みを設定することが重要だと述べてきました。
今回は、その枠組みに沿って行う情報収集を扱います。

多くの人は、分析の第一歩は「とにかく情報を集めること」だと考えます。
企業でも、新規事業や競合分析を始めるとき、まず大量の資料を集める場面をよく見かけます。
筆者が防衛省や陸上自衛隊で接してきた情報担当者も、同じ発想を持っていました。

しかし、この考え方は正確ではありません。

情報収集とは、
あらかじめ設定した問いと枠組みに沿って集め、不要な情報を切り落とす作業です。
集めること自体が目的ではありません。

ここでは、企業分析でも利用頻度が高いオープンソース情報、
いわゆる「オシント」を前提に考えていきます。

キーワード検索は「問い」を投げる作業である

枠組みを設定したら、次に行うのは二つです。
一つは、枠組みに入れる情報を集めること。
もう一つは、すでにある情報を、枠組みの各要素に振り分けることです。

企業分析で使う情報源は、新聞、業界誌、決算資料、書籍、そしてインターネットです。
インターネットは、低コストで膨大な情報に触れられる一方で、真偽が混在しています。

ここで重要になるのが、キーワード検索です。
このキーワードは、先に設定した問いや枠組みを、そのまま言葉にしたものです。

たとえば、
「ある中国企業がEV市場でなぜ急成長しているのか」を知りたいとします。

最初に「中国 EV 企業名」で検索して、十分な情報が得られなくても、そこで止めてはいけません。

  • 「EV」を「電池」「車載半導体」「サプライチェーン」に広げる
  • 「中国」を「地方政府 補助金」「産業政策」に置き換える
  • 企業名を、創業者名、出身大学、過去の事業に分解する

このように、
少し上位の概念に広げる、あるいは切り口を変えることで、必要な情報に近づけます。

市場の実態に近づくほど、検索語は直接的でなくなります。
キーワード検索とは、発想力を使って問いを投げ直す作業だと考えるべきです。

検索要領を工夫する

検索には、知っておくだけで効率が大きく変わる基本的な技法があります。
ここでは、実務で使いやすいものを紹介します。

「〜とは」検索
新しい分野を理解するときに有効です。
「生成AI とは」「炭素国境調整措置 とは」と入力すると、定義や背景を整理した解説に当たりやすくなります。

AND(+)検索
複数の条件を同時に含む情報を探す方法です。
「半導体+台湾+地政学」と入力すれば、技術解説だけでなく、リスクや戦略に触れた記事が抽出されます。

OR(−)検索
どちらか一方を含む情報を広く集めたいときに使います。
新規事業の初期段階で、関連情報を漏れなく確認する際に有効です。

NOT検索
特定の話題を意図的に除外する方法です。
「EV NOT 中国」と入力すれば、中国以外の事例に絞って情報を集められます。

実務では、
問いを分解し、三〜四語のキーワードに落として検索する方法をよく使います。
これは、頭の中の分析を、検索という形で外に出す作業でもあります。

ネット情報の利点と欠点を理解して使う

ネット情報の扱い方については、ジャーナリストの 池上彰 氏と、作家の 佐藤優 氏が、
「『ネット検索』驚きの6極意」(東洋経済)という記事で示唆的な指摘をしています。

両氏の主張を要約すると、
ネットは便利だが、依存すると判断を誤る、という点に集約されます。

理由は、企業の情報分析でもそのまま当てはまります。

  • デマや思い込みが混じりやすい
  • 情報が時系列で並び、重要度が見えにくい
  • 引用や孫引きが多く、一次情報に行き着きにくい
  • 関心分野だけを追い、視野が狭くなる
  • ネット上の声を社会全体の声だと誤解する

とくに注意すべきなのは、
ネット上の盛り上がりが、市場全体の動きと一致するとは限らない点です。

SNSで酷評されている製品でも、
実際の売上は堅調、という例は珍しくありません。
声を上げない多数の顧客は、ネットには現れないからです。

一方で、ネットには他では代替できない強みもあります。

  • 低コストで大量の情報に触れられる
  • 情報源が明記された資料も多い
  • 図書館に行かなくても事前に絞り込める
  • 既存メディアにはない視点に出会える

重要なのは、使い方を誤らないことです。

ネット情報を使う際には、
情報源がどこかいつ書かれたものか
この二点を必ず確認する。
それだけで、情報の信頼度は大きく変わります。

今回はここまで

情報収集とは、量を集める作業ではありません。
問いを立て、問いに合わない情報を捨てる作業です。

企業の意思決定で、
「情報は集めたが、結局よくわからない」という状態になる場合、
多くは、問いや枠組みが曖昧なまま収集に入っています。

次回は、情報収集における着眼点について述べます。

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