インテリジェンス思考術(第20回)

情報分析とは何か

これまでの回では、情報をどのように集め、どのように処理するかを説明してきました。
しかし、情報を集めただけでは意味がありません。処理しただけでも足りません。情報を分析してはじめて、インテリジェンスになります。

今回から、インテリジェンス作成の核心である「情報分析」の話に入ります。

情報分析とは、インフォメーションをインテリジェンスに変える作業です。
この作業は、分析、統合、解釈という三つの過程から構成されます。

一般に「情報分析」あるいは「情報の分析」と言う場合、この三つの過程を指します。
さらに広い意味では、問いを設定し、情報を収集し、分析、統合、解釈を経てインテリジェンスを作成するまでの一連の作業を含めることもあります。
逆に狭い意味では、この三つの過程のうち「分析」だけを指すこともあります。

分析という言葉は、英語の「Analysis(アナリシス)」の訳語です。この訳語はよくできています。

「分析」の「分」という字は、八と刀を組み合わせた文字です。一つのものを二つ以上に分けることを意味します。「析」という字は、斤(おの)と木を組み合わせた文字で、木をおので細かく切り分けることを表します(後正武『意思決定のための「分析技術」』)。

つまり分析とは、物事を分けて見る作業です。

現実の問題は複雑です。複数の要因が重なり合って動いています。そのため、時系列、地域、機能などの観点から分けて整理しなければ、実態は見えてきません。

ただし、分析だけではインフォメーションはインテリジェンスになりません。分析した結果を統合し、意味を解釈する必要があります。分析、統合、解釈という作業を通して、情報ははじめてインテリジェンスになります。

情報分析の構成要素

情報分析にはいくつかの基本要素があります。代表的なものは、前提、証拠、仮説、論証です。

まず前提を設定します。前提とは、想定あるいは仮定とも呼ばれるものです。前提がなければ議論は広がりすぎます。分析の範囲と焦点を定めるために前提が必要になります。

前提とは、不完全であるものの、おおよそ正しいと判断される情報です。

たとえば現在のウクライナ戦争を考える場合、多くの分析では「プーチン氏は政権を維持している」という前提を置きます。この前提の上で、ウクライナ情勢、ロシアの対外政策、軍事作戦などを分析します。

ただし、前提は絶対に正しいとは限りません。
「プーチン氏が政権を維持する」という前提もあれば、「プーチン氏が暗殺される」という事態も理論上は考えられます。そのため分析者は、必要に応じて前提を見直し、別の前提を置いて考えることもあります。

前提を置いた後、分析者は仮説を立てます。
仮説とは、情報上の問いに対して提示する仮の結論です。一定の理論的根拠を持つものですが、正しいとは限りません。そのため仮説は必ず検証する必要があります。証拠を集め、立証や反証を行います。

仮説を立て、それを検証する際にはさまざまな思考法を使います。

ビジネスの世界では、「○○シンキング」あるいは「○○思考」と呼ばれる思考法が数多く紹介されています。クリティカルシンキング(批判思考)、ラテラルシンキング(水平思考)、ロジカルシンキング、仮説思考、アナロジー思考、論点思考、イメージ思考などです。

ただし、これらの思考法に明確な境界があるわけではありません。多くの場合、複数の思考法を組み合わせて使います。たとえば、ラテラル思考で仮説を考え、その仮説をロジカル思考で検証する、といった形です。(了)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA