『兵法三十六計で読み解く中国の軍事戦略』まもなく出版(2025年9月7日作成)

■はじめに

すでにお伝えしたとおり、9月28日、拙著『兵法三十六計で読み解く中国の軍事戦略』が刊行されます。これまでツイートやメルマガでも紹介してきましたが、なかなか広く認知されません。少し、テーマが重いのか苦戦しています。書店やアマゾンでの予約が少なければ刊行部数も抑えられてしまう時代、どうすれば読者に届けられるかに苦心しています。

私は防衛省を退いて10年になりますが、中国軍事を正面から論じるのはこれが初めてです。退職直後に書けば「実務の延長」と受け取られかねず、職務から距離を置くことこそインテリジェンスの鉄則だと考えてきました。

ただ、この10年のあいだに私が知っていた秘匿情報はすでに意味を失っています。現在の私には能力分析を行う材料はなく、できるのは公開情報や歴史的考察をもとにした意図分析です。

本書で取り上げたのは、その「中国の軍事意図」です。軍事行動に直結する政治的意図、権力闘争や経済戦略を、歴史や地理の文脈とあわせて分析しました。とくに中国の戦略文化に深く根づいた思考をどう読み解くか――そのための切り口として『兵法三十六計』を位置づけています。

単なる「台湾有事シナリオ」の羅列ではなく、中国という国家がどういう思考法で行動するのかを理解する――そのための視座を読者の皆さんに提示するのが、この本の狙いです。

■中国軍事分析――意図と能力

軍事分析は大きく「能力」と「意図」の両面から行います。能力分析にはオシントだけでなく、シギント、イミント、ヒューミントを総合する必要があり、現在の私の立場では到底及びません。

一方、意図分析は人の心の内を読む作業であり、能力分析のように可視化できない分、本来は格段に難易度が高く、しばしば誤りを生みます。プーチン氏によるウクライナ侵攻をめぐって、多くの専門家がその意図を見誤ったのは記憶に新しいところです。

さらに意図分析は、誰もが「もっともらしく語れてしまう」領域でもあります。だからこそ玉石混交となり、信頼できる分析と憶測まじりの言説とが入り乱れます。

それでも、意図分析を避けることはできません。能力分析だけに依拠すれば「あれもできる、これもできる」と無数の可能性が並び立ち、結局は対応を定められなくなってしまうからです。もっとも、意図分析も決して不可能ではありません。習近平氏もプーチン氏も金正恩氏も、意志決定を完全に恣意的に行っているわけではなく、国家の法や制度、世論、国際情勢といった制約の中で動いています。

だからこそ「分析官」という職があり、その積み重ねが奥義となるのです。私も万能ではありませんが、中国分析に30年以上携わってきた経験があります。その蓄積をふまえ、中国の「意図」をどう読むか――その課題に本書で挑みました。

■兵法三十六計というツール

意図を少しでも根拠をもって語るためには、その国の歴史や知識が欠かせません。独裁者の背後には、必ず国家としての「クセ」が作用します。私はそのクセを読み解く道具として、防衛省時代から「孫子」と「兵法三十六計」に注目してきました。

孫子は広く知られていますが、実際に体系的に理解するのは容易ではありません。中国専門家ですら全十三編の内訳さえ正確に言える人は少なく、「戦わずして勝つ」といった耳ざわりの良い一節だけが独り歩きしているのが現状です。

これに比べて兵法三十六計はきわめて簡潔です。全体でわずか186字。3〜4字の成語で36の計略を示し、それぞれに歴史物語が添えられています。敵を欺き、退き、奇襲し、再起を図る――そうした知恵が凝縮され、物語として記憶に残ります。米国では政治学者マイケル・ピルズベリーが『China 2049』で多数引用するなど、研究対象として扱われています。しかし日本では、「孫子」に比べてはるかに露出がすくなく、しかも、主にビジネス書として紹介されるにとどまり、安全保障の文脈で真剣に読まれることはほとんどありません。

孫子は深みがある一方で、体系的に理解しづらく記憶にも残りにくい。これに対して兵法三十六計は短く、覚えやすい。歴史と照らし合わせれば知識が体系的に積み上がり、必要なときに自在に引き出すことができます。私にとっては「思考術の書」なのです。

本書はその思考法を読者と共有する試みでもあります。

■本が読まれない時代に

いまは情報が氾濫し、本がなかなか届かない時代です。しかし本とは、著者が長い葛藤を経て、編集者とのやりとりを重ねて形にする「思考の結晶」です。雑誌やインターネットの断片的情報では養えない「ものを見る目」を、私は本を通じて読者に渡したいと思っています。

私が若い頃、小林秀雄を繰り返し読み、理解に苦しみながら思考を磨きました。いまも難解ですが、挑み続けることで得られる力があります。読書とはそういうものだと思っています。私の新書もまた、読者の思考を鍛える一冊になればと願っています。

中国の歴史戦と万博、拙著まもなく販売(2025年8月31日)

■はじめに

先週、大阪・関西万博を見学しました。会場は人であふれ、入場ゲートには長蛇の列。人気パビリオンは事前抽選や当日抽選が必須で、なかなか入ることもできませんでした。それでも万博の高揚感は味わえた反面、掲げられた「理想」と、実際に来場者の目に映る「現実」との乖離を強く感じました。

一方で、このメルマガが配信される翌日の9月3日には、北京で「抗日戦争・世界ファシズム戦争勝利80周年記念式典」が予定されています。習近平氏が軍事パレードを主催し、プーチン氏や金正恩氏の参列も報じられています。さらにインドネシア、マレーシア、ベトナムなどアジア諸国の首脳も出席すると伝えられ、中国は「東アジアの盟主」を誇示しようとしています。

ここには、またしても日本に突き付けられる「歴史戦」の構図があります。日本政府が欧州やアジア諸国に対し、軍事パレードへの参加を見合わせるよう要請したとの報道もありますが、もし事実なら逆効果となりかねません。「歴史を反省しない国」という口実を与え、中国の思惑に拍車をかける恐れがあるからです。

平和と未来をテーマに掲げた万博と、過去の戦争を政治的に利用する歴史戦。この二つを見比べると、日本がいかに「物語を紡ぐ力」で後れをとっているかを痛感します。来場者数やイベント演出に気を取られるのではなく、アジアを中心とする青少年を積極的に招き、歴史と未来を架橋する戦略を打ち出せなかったのか――その点が何よりも残念でした。

■新著がいよいよ9月10日発売

先週のメルマガでは、新刊『15歳からのインテリジェンス』の背景として、青少年が認知戦の主要なターゲットになっている現実を取り上げました。今週は、いよいよ発売を目前に控え、さらなる本書の紹介です。

アマゾンでは版元が用意してくださった紹介ページが公開されています。非常に工夫された画像や文言で魅力を伝えてくださっていますが、残念ながら他の書籍広告に紛れてしまい、最後までスクロールしないと見つけにくいかもしれません。ぜひ一度ご覧になっていただければと思います。

しかし本当の魅力は、やはり中身にあります。『15歳からのインテリジェンス』は、中学生にも読める物語形式で描かれていますが、その背後に込めたのは「情報の洪水にどう向き合い、どう自分の意思決定に活かすか」という普遍的な問いです。つまり、本書は青少年向けの体裁をとりながら、実は大人が“自分のために”読み直すことでこそ真価を発揮する一冊なのです。

■インテリジェンスとは何か

インテリジェンスとは何か。しばしば誤解されますが、新聞記事やネットの断片を集めただけではインテリジェンスにはなりません。それは単なるインフォメーション(情報)にすぎないのです。インテリジェンスとは、情報を解釈し、意思決定に活かすための知恵であり、未来へ進む羅針盤です。

高校の教科書「情報」では、データやツールの扱い方は学べても、それをどう戦略や人生に結びつけるのかという「連接」は弱い。まさにその隙間を埋めるのがインテリジェンスなのです。

■目的があるから情報は微笑む

インテリジェンスは捜査のように「事実を突き止める」ものではありません。まだ見ぬ未来に向かって「目的」を定め、その達成に必要な情報をまず選び取ること。そこからさらに意味を解釈し、意思決定へと結びつけてこそ、それはインテリジェンスとなります。目的があるからこそ、情報は光を放つのです。

本書に登場する中学生に対し、元防衛省分析官の父親は繰り返しこう説きます。「インテリジェンスは目的から出発する」「目的が明確になったとき、情報は意味を持つ」「情報は目的のある人間にしか微笑まない」

おそらく「目的」という言葉は本書の中で最も頻出するキーワードでしょう。そしてその目的を具体化するものが「問い」です。問いを立てることで情報は初めて生き、羅針盤のように私たちを導きます。

■大人が読むべき理由

『15歳からのインテリジェンス』と銘打っていますが、実は最も大きな読者は大人であるべきだと私は思っています。なぜなら、情報にあふれる社会の中で、私たち自身こそが「目的を見失い」「問いを立てる力を鈍らせている」からです。

仕事で、人生で、あなたは今どれほどの「情報」にさらされていますか。そして、その情報を意思決定に結びつけられているでしょうか。情報に振り回される側に立つのか、情報を使いこなす側に立つのか――その分岐点にあるのは、インテリジェンスの有無です。

■隠されたキーワードを探してほしい

本書の物語はシンプルです。しかし、行間には「目的」「問い」「羅針盤」といったキーワードが巧妙に織り込まれています。どうか読みながら、それらを探し、自分自身の意思決定と照らし合わせてみてください。

『15歳からのインテリジェンス』は9月10日発売。青少年のために書きましたが、同時に大人が学び直すための書でもあります。どうか、私の新たな挑戦を応援していただければ幸いです。

次回は、9月27日に刊行予定の『兵法三十六計で読み解く中国の軍事戦略』へと話を移し、中国の現状についてお伝えします。

中国の認知戦は青少年がターゲット(2025年8月22日作成)

私は母親から、そして日本昔話の数々から、多くのことを学んできました。私の子どももすっかり大きくなり、今では私の戯言には耳を貸さなくなりましたが、幼い頃は、私なりにアレンジした昔話を夢中で聞いてくれたものです。

物語は人の心に静かに染み込み、価値観や判断を形づくる力を持っています。

戦争においても「物語(ナラティブ)」は心理や認知に影響を与え、敵への憎悪を生み、戦争支持の世論を形成し、善悪を二分する枠組みを築きます。思い返せば、人類の戦いの原点は心理戦にありました。恐怖や憎悪をあおり、士気を高め、相手を萎縮させる――そこから物理的な戦いへと移り、やがて情報システムを駆使する戦いへと進みました。そして今日、再び人間の認知や心理そのものを操作する「認知戦」が前面に出ています。すなわち、心理戦→物理戦→情報戦→認知戦という流れは、一見「元に戻った」ように見えて、より精緻で高度な形へと進化してきた。これこそ、人類の歴史が「螺旋的に発展」している証左なのです。

現代の認知戦において標的となるのは、指導者やインフルエンサーです。しかし忘れてはならないのは、未来を担う青少年もまた、その矛先に晒されているという事実です。

たとえば中国共産党には青年組織(共青団)が存在し、日本のリベラル政党や宗教団体も若者を対象とした活動を展開しています。これらはいずれも、青少年への啓発教育の重要性を認識している証左と言えるでしょう。さらに中国は、国際交流の名目で日本国内の親中組織と連携し、青少年交流を盛んに企画しています。その背景には、歴史認識の形成において青少年こそが最も重要なターゲットであるという戦略的見解がはっきりと示されているのです。

では、大人はどうするべきでしょうか。いきなり「認知戦」の危うさを説いても、青少年の心には届きません。まず私たち自身がインテリジェンスを理解し、情報リテラシーを高めること。そして、自ら語り部となって、若い世代にその知を伝えていくことが不可欠です。しっかりとした知識を持ち、青少年のリテラシーを啓発する――そのために書き上げたのが、新著『15歳からのインテリジェンス』です。

本書は、青少年が直接読んでも理解できる内容になっています。しかし同時に、大人のみなさんがまず手に取り、自ら学び、語り部となって若い世代へ伝えていただくことで、より大きな力を発揮します。もちろん、もし青少年自身が関心を持ち、本書を手にしてくれるなら、それは何よりも歓迎すべきことです。――『15歳からのインテリジェンス』は、大人と青少年をつなぐ架け橋として生まれた一冊なのです。

『15歳からのインテリジェン』の発売日は9月10日、渾身の一冊『兵法三十六計から読み解く中国の軍事戦略』は9月27日です。

次週も前者に纏わるお話をし、その次の週から少し、現在の中国の台湾や尖閣における現状と日本の対応に関するお話へと発展させていきます。

意思なき国家は、インテリジェンスを持っていても滅ぶ(2025年8月7日作成)

はじめに――

8月6日。広島に原子爆弾が投下されたこの日、私たちは単に被害の記憶をたどるだけでなく、「なぜそれが起こったのか」「どうすれば回避できたのか」と、自らに問い直す必要があります。原爆は本当に戦争を終わらせるための手段だったのか。それとも、アメリカの冷戦戦略の一環だったのか。一面的な説明では語りきれない問題です。

しかし、確かなのは――日本にも、そのはるか前段階で、いくつもの「意思決定の岐路」が存在していたという事実です。情報はあった。警告もあった。それでも日本は、破滅的な戦争へと突き進みました。インテリジェンスの敗北だったのか? いや、正確には「情報をもとにした合理的な判断が働かなかった」というべきでしょう。

◆ 情報はあった。それでも誤った。

日本は戦前、アメリカの国力や軍事力をまったく知らなかったわけではありません。総力戦研究所では、対米戦争をシミュレーションした結果、すでに「日本は敗北する」という結論が導かれていました。山本五十六も「半年や一年は暴れてみせるが、あとの保証はできない」と語っています。

つまり、情報は存在していたのです。問題は、それを直視し、受け入れるだけの政治的意思と冷静な国家戦略がなかったことでした。陸軍と海軍、外務省と軍部、政府内の主戦派と穏健派――組織は分裂し、情報は縦割り構造の中で共有されず、都合の悪い情報は「希望的観測」によって排除されていきました。

さらに、開戦を後押ししたのは、国民世論とメディアによる「大東亜戦争」への高揚感です。情報はあっても、それが戦略や意思決定に反映されなかった。これこそが、日本がたどった「インテリジェンスの限界」であり、その結果としての「意思決定の敗北」なのです。

◆ 戦略は、国力の外には出られない

国家の戦略は、本来、「国力の範囲内」で構築されるべきです。しかし日本は、しばしばそのバランスを誤りました。日清・日露戦争の勝利は、日本に「列強の仲間入り」という幻想を与え、「国力を超えた戦略」が常態化していきました。

昭和期の軍部は、国際的孤立や資源不足という現実を直視せず、拡張的な対中戦線、さらには無謀な対米戦争に踏み出します。「一撃講和」といった非現実的な仮説を前提に、都合の良い情報だけを選び取って政策判断を下していく――そんな構図が確かに存在しました。

つまり、戦略が国力を無視し、情報はその戦略を補強する“装飾品”として扱われたのです。どれだけ高度なインテリジェンスがあっても、それを活かす戦略が国力に即していなければ無意味です。そして戦略が誤れば、インテリジェンスは無視され、あるいは歪められて利用される。その連鎖が、日本を破局へと導きました。

◆ 現代日本もまた、同じ構造を抱えている

現代の日本もまた、戦前と同様の構造的ジレンマを抱えています。国家安全保障戦略には、「日米同盟を基軸とする」方針が明記されており、外交・防衛・経済安全保障を網羅する戦略文書が存在します。

しかし、問うべきは「その戦略は日本の主体的な意思に基づいて構築されているのか?」という点です。安全保障はアメリカに、経済は中国に依存するという構造のなかで、日本が「どこを目指すのか」を明確に描けているとは言いがたいのが現実です。国民の間にも、「戦略的な選択」への理解や関心が深まっているとは言えません。

結果、日本の戦略は「同盟に従属した政策実行」にとどまり、主権的意思の表出としての戦略とは乖離しています。戦略が文書にあることと、戦略的国家であることは同義ではありません。現代日本は、「戦略を持っているようで、選べていない」国家なのです。

インテリジェンス機能が整っても、それを活かす政治的意思が欠けていれば機能しません。情報があっても、それを活かす「土壌」がなければ意味がない――これは戦前からの教訓ですが、私たちは今もそれを活かしきれていません。意思なき国家には、真の戦略はなく、そのような国家はやがて他国の戦略に巻き込まれ、「選ばされる国家」となります。日本は今、まさにその分岐点に立っています。

◆ 小国イスラエルに見る、国家の胆力

たとえばイスラエル。人口も経済規模も小さく、周囲を敵対的国家に囲まれた小国です。しかし、彼らには「生き残る」という国家意思が明確に存在し、それを支える胆力があります。だからこそ、イスラエルの戦略はシンプルかつ強靭です――「我々の生存を脅かすものは、どのような評価を受けようとも叩き潰す」。

モサドに代表されるインテリジェンス機関は、戦略を補完する手段として高度に統合されており、「情報」と「判断」は乖離していません。たとえば、イランの核開発問題では、イスラエルはアメリカに空爆を促す一方、「やらないなら我々がやる」と明確に伝え、実際に行動を示しました。それによって、アメリカの対応を“戦略的に”誘導したのです。

ここには、たとえ国力が限られていても、国家としての明確な戦略と覚悟があれば、外交も安全保障も主体的に展開できるというリアルがあります。日本と比較して見えてくるのは、「国力の大小」ではなく、「国家意思の強度」こそが国家の運命を決める、という厳然たる事実です。

◆ 今、我々に必要とされる覚悟

私はインテリジェンスを専門に研究しています。だからこそ、「どのような情報を得るか」「どれだけ正確に未来を読むか」に関心を持ち続けてきました。しかし、より根本的に大切なのは、「私たちがどのような未来を選ぶ覚悟を持っているか」という問いです。

インテリジェンス、意思、戦略、国力――この四つの要素の中で、最も見落とされがちなのが「国家意思」という、目には見えない力です。戦後の日本は、平和と繁栄の中で、この意思を少しずつ失ってきたのかもしれません。

参議院選挙の裏の構図(2025年8月1日作成)

こんにちは。今回は、先日の参議院選挙をきっかけに、ほとんど語られない“裏の構図”に注目したいと思います。

近年、各国の選挙に対して、他国による認知戦や影響力工作の存在がたびたび指摘されるようになってきました。では、今回の日本の参議院選挙ではどうだったのでしょうか。

リベラル政党が全体的に伸び悩む一方で、参政党や保守党など、新たに登場した保守系政党が大きく議席を伸ばしました。この結果を見て、多くの方はこう考えたのではないでしょうか。

「中国が裏から関与するなんて、考えすぎではないか」

あるいは

「仮に関与があったとしても、結果は中国にとって失敗だった。むしろ良かったではないか」

確かに、表向きの状況を見るかぎり、そう考えるのは自然なことかもしれません。

でも、本当にそうでしょうか?そうした見方は、表に見える情報だけを信じることによって、逆に裏にある構図を見落としているのではないでしょう。

そこで、歴史に照らして、見えにくい戦略構造を考えるという視点から、一つの見方を提示したいと思います。決して陰謀論ではありませんよ。

前回は、日本共産党が今も統一戦線の綱領を放棄していないことを紹介しましたが、今回は中国の側がこれまで日本に対して行ってきた対外工作、特に「統一戦線」の歴史を振り返ってみたいと思います。

1960年代、中国は共産主義の同志であるはずの日本共産党と決裂しました。きっかけは、毛沢東が「日本や沖縄でゲリラ戦を展開せよ」と要求したのに対し、日共がこれを拒否したことです。その後、中国は①日共に対する分裂工作等(日共外郭団体の分裂、日共から除名された親中派人物の取り組み、日共組織から除外された団体の取り込み等)、②社会党左派勢力への接近、③保守派勢力への接近、④創価学会への接近、⑤青年団体などへの接近を行いました。

保守派勢力への接近は、六〇年安保闘争の失敗を契機に、日中国交回復に向けた土壌をつくる目的で、1960年代から開始されました。親米派の保守本流に対しては反動派として徹底した闘争方針を採りましたが、一方の反主流派に対しては親睦を名目とした接近や招待工作を強化しました。

1961年1月の社会党黒田寿男の訪中時、毛沢東は次のように語りました。

「日本政府の内部は足並みがそろっていない。いわゆる主流派と反主流派があって彼らは完全に一致していない。たとえば松村、石橋、高碕などの派閥は、われわれの言葉で言えば“間接の同盟軍”である。あなた方にとって、中国の人民は“直接の同盟軍”であり、自民党(当時、中国側は“人民党”と表現)内部の矛盾は“間接の同盟軍”である。彼らの亀裂が拡大し、対立と衝突が生じることは人民に有利だ。」

ここで重要なのは、中国がイデオロギーではなく、利用できるものを使うという実利を重視していたことです。右か左かではなく、日本社会にどれだけ影響を与えられるかを基準に、接触対象を選んでいたのです。社会の認識を揺るがす、まさに“認知戦”の先駆けはとっくに開始されていたと言えるでしょう。

では、現代の日本に置き換えてみましょう。

新たな勢力の台頭により、保守陣営全体が力を増したように見えるかもしれません。ですが、もしその動きが、自民党という大きな保守基盤を内側から分裂させるような結果をもたらしているのだとしたら、それは、むしろ中国にとって都合のよい展開と言えるかもしれません。

新興政党は、保守でもリベラルでも、基盤が脆弱である分、外部からの影響を受けやすいという面もあります。中国にとって最もやっかいな相手は、強くまとまった敵です。

一枚岩の政治勢力は、外交や防衛の場でも強い交渉力を発揮し、中国の浸透や工作を跳ね返す力を持ちます。

けれども、政治的な対立が激しくなり、保守内での対立や足の引っ張り合いが生じれば、日本の判断力は鈍り、社会には分断が生まれます。

まさにそうした“内部からの弱体化”こそが、中国の統一戦線戦略の核心なのです。

ですから、「反中を掲げる政党が伸びたから良い」と短絡的に判断することには、やはり慎重さが求められます。

今は、銃弾が飛び交う時代ではありません。見えない情報と認知をめぐる戦いが進行しています。「味方の顔をした敵」「一部の真実で信頼を勝ち取る戦略」──それこそが情報戦の基本です。

「保守だから安心」「反中だから正しい」といった単純なラベルに惑わされる時代は終わりました。私たちに必要なのは、「この構図で、最も得をしているのは誰か?」という問いを持ち続ける視点です。それを見抜けなければ、私たちは知らぬ間に情報戦の舞台で“敗者の側”に立たされてしまうかもしれません。

今回の内容はやや挑戦的だったかもしれませんが、単純な構図に流されず、より広い視野で物事をとらえるための一助となれば幸いです。

統一戦線工作への警戒(2025年7月26日作成)

先日の参議院選挙の余波が続いています。参政党や保守党といった新興政党が躍進し、「日本人ファースト」という言葉が注目を集めました。一部では、排外主義につながる危険な思想であるとの批判も見られます。

こうした中で、野党が結集して自民党に政権交代を仕掛けるのかと思いきや、石破首相に対して「辞めるな」という声が上がっています。しかも、その支持者の多くは左派系の市民や野党支持層であるようです。

現在、左派野党は伸び悩んでおり、主張の異なる他の野党との連携も難航しています。こうした状況のもと、自民党内でポスト石破の体制が保守化し、右派寄りの野党と連携する事態を警戒しているのかもしれません。

このような場面で思い出されるのが、2016年8月7日に開催された共産党創立94周年記念講演での志位和夫委員長(当時)の演説です。

2016年7月10日の参議院選挙では、日本共産党が好成績を収めました。これを受けて、志位委員長は以下のように語っています。

「みなさん。今回の野党と市民の共闘は、日本共産党の歴史でも、日本の戦後政治史でも、文字通り初めての歴史的な第一歩であります。(拍手)
日本共産党は、1961年に綱領路線を確定して以降、一貫して統一戦線によって政治を変えることを、大方針に据えてきました。」

1960年代後半から70年代にかけて、共産党は国政選挙で躍進し、統一戦線も発展を見せました。ただし、この時期の統一戦線は主に地方政治、すなわち革新自治体の形成にとどまり、国政レベルでは社会党との選挙協力は限定的でした。

ところが、2016年の参院選では、安保法制(いわゆる「戦争法」)反対の運動に後押しされ、共産党が発表した「戦争法廃止の国民連合政府」構想が契機となり、全国32の1人区すべてで野党統一候補が実現。11選挙区で勝利を収めました。これは全国規模での統一戦線の初めての成功例であり、志位委員長は「大きな成果」として高く評価しました。

その後、共産党は新潟県知事選挙などで民進党との共闘を模索しますが、連合との関係をめぐって対立が生じます。志位委員長は2016年10月27日の記者会見で、連合が「共産党と一線を画すよう」民進党に求めていることに対し、民進党執行部はその要求を拒否し、共産党との共闘を続けるべきだと主張しました。

しかしその後、民進党は希望の党への合流、立憲民主党との分裂といった混乱を繰り返し、共産党との統一戦線は結果的に崩壊しました。2017年の衆議院選挙では、日本共産党は前回から大きく議席を減らす結果となりました。

現在、石破首相へのエールの中に、再び「統一戦線」的な発想を見て取ることができます。共産党はいまなお綱領に統一戦線の方針を掲げており、「敵の敵は友」として、たとえ保守系政治家であっても穏健派であれば一時的に共闘の対象とするという柔軟な戦略を持っています。

この「統一戦線」は、もともとボルシェビキ革命期の戦術として生まれ、毛沢東がより洗練させて体系化したとされています。中国は戦後、国際統一戦線の枠組みの中で、当初はソ連を友とし、アメリカを敵としながら中立国との友好関係を築くことでアメリカを包囲しました。やがて1970年代には、逆にアメリカを友とし、ソ連を敵と見なす枠組みに転換し、日本とは「友好関係」を強調するようになります。

そして現在、再び中国とロシアが接近し、BRICSを通じて反米的な統一戦線が展開されつつあります。

現在の日本共産党が政権与党となる可能性は低いかもしれません。しかし、SNS社会においては、少数の強い言論が「潮目」を変えてしまうことがあります。意図的に演出された“空気”が、多数派の沈黙によって拡大してしまう――そんな危険があるのです。

多くの国民は政治に対して無関心であり、声を上げることも少ないのが実情です。しかし、その「沈黙の海」が、強い意志を持つ少数派に潮目を許してしまう土壌となり得ます。

さらに、その背後に、強力な国家意思と資金力を持った他国が存在し、そうした動きを支援・利用する可能性があるとすれば、私たちは決して安閑としてはいられません。

中国の新型空母「福建」が24日就役?(2025年7月20日作成)

暑い日が続きますね。関東もやっと梅雨明けです。エアコン全開。ずっと前に明けたと思っていました。参院選挙は下馬評のとおり、参政党の飛躍。10年前からヨーロッパでは極右政党が伸長。反グローバリズムの動きが日本まで押し寄せているのでしょうか。

新しい『防衛白書』も先日刊行。中国の軍事活動の活発化との内容に中国が反発。これも例年通りの状況です。

先日はこんな記事も。「中国空母が日本周辺で米空母の迎撃訓練、米軍役と中国軍に分かれ対抗…台湾有事を見据え実施か」

中国海軍の空母2隻が6月に日本周辺の太平洋上などに展開した際、米空母打撃群の迎撃を想定した演習を実施していたようです。中国空母「遼寧」と「山東」は5月下旬以降、日本周辺の太平洋上に同時展開し、米軍役と中国軍に分かれて対抗する形式の訓練を行ったようです。

「中国の新型空母「福建」が24日就役か 初の電磁式カタパルト配備」という香港メディアもあります。

まず、今回の就役で中国は空母3隻体制に入るわけで、これは単純に「戦力が増えた」というより、訓練・整備・実戦のローテーションが可能になったという意味が大きい。つまり、常に1隻は外洋で運用できる体制が整ったということです。

次に、福建は中国として初めてカタパルトを搭載した空母で、しかも従来の蒸気式ではなく、電磁式(EMALS型)です。これはアメリカのフォード級空母に搭載されているのと同様の技術で、中国がこの技術を実用化したのはアメリカに次いで世界で2番目とされています。

このカタパルトの導入により、これまで中国空母が苦手としていた早期警戒機(KJ-600)などの重い航空機の発艦が可能になると見られています。技術面では、中国海軍が確実に近代化していることの象徴と言えるでしょう。

ただし、福建にはいくつかの重要な制約もあります。

最大のポイントは、福建が原子力空母ではないということです。推進方式は通常動力(ガスタービンとディーゼルの併用)であるため、航続距離や速度には限界があります。アメリカの原子力空母のように長期間にわたって高速で展開する能力はなく、燃料や艦載機用の補給に依存する構造です。つまり、外洋での長期作戦や迅速な機動性にはやや不利な立場にあると考えられます。

さらに、台湾有事のような実戦を想定した場合、福建の運用には相当なリスクが伴います。西太平洋にはアメリカや日本、台湾が展開する対艦ミサイル、潜水艦、無人偵察システムが多数存在しており、空母は最も狙われやすい目標になります。現実的には、福建が前線に進出することは難しく、後方にとどまってプレゼンスを示す「政治的兵器」としての役割が中心になると考えられます。

ちなみにアメリカは、フォード級空母(CVN-78)をすでに運用中ですが、次の艦(CVN-79以降)については慎重に進めており、急速な量産はしていません。その理由としては、

  • 単艦あたりの建造コストが非常に高額であること(1隻約130億ドル)
  • 新技術のトラブルが相次いだこと(EMALSや着艦装置の不具合など)
  • 空母という存在自体が、現代の戦場ではミサイルや潜水艦に対して脆弱になってきていること

といった背景があります。

そのためアメリカ海軍は、空母戦力を「数を増やす」よりも、「技術を成熟させながら精度高く使う」方向に舵を切っている状況です。

総合的に見れば、福建の就役は中国海軍の大きな進歩であり、戦力の「質的向上」を象徴する動きであることは間違いありません。しかし、実戦でどれだけの役割を果たせるかという点では、まだ制約も多く、慎重に評価すべき段階だと思います。

現時点ではむしろ、「空母を持った」というメッセージ自体が国際社会へのアピールであり、情報戦や政治戦の文脈で使われる兵器としての意味合いが強いのではないでしょうか。

岩屋外相との会談にみる中国の思惑(2025年7月13日作成)

7月10日、マレーシアで日本の岩屋毅外相と中国の王毅外相が会談しました。岩屋氏は、中国軍機による自衛隊機への異常接近、レアアース輸出の制限、邦人の拘束問題などに懸念を示し、福島第一原発の処理水を巡る日本産水産物の輸入制限の撤廃も要請しました。

一方、王毅外相は「日本企業の正常な需要は保証される」と応じ、関係改善に前向きな姿勢を見せました。翌11日には、中国の何立峰副首相が大阪万博の式典に出席。BSE(牛海綿状脳症)問題で停止していた日本産牛肉の輸入再開に向け、動物検疫協定の早期発効に意欲を示しました。

こうした“譲歩”の一方で、中国軍機による異常接近や東シナ海での構造物設置など、軍事的圧力は依然として続いています。このギャップに対し、「なぜ中国は譲歩しながら挑発も続けるのか」と取材されることがあります。

けれど、これは矛盾ではありません。むしろ非常に合理的な行動です。中国は「硬軟両用」という外交スタイルを徹底しています。たとえば、軍や情報部門が圧力をかけ、外交や経済部門が融和を演出する。この役割分担により、“飴と鞭”を巧みに使い分けることで、相手の批判や抵抗を抑え込み、自らに都合の良い行動を取らせようとするのです。

米中対立が続く中で、日本との経済関係を安定させておきたい――そんな意図のもと、日本に恩を売るように牛肉や水産物の“譲歩”を見せる。だがその目的は、より本質的な戦略――領有権問題などで日本の発言力を削ぐだけでなく、実際の監視活動や行動そのものを牽制・抑止することにあります。 「こちらは牛肉を買ってやっているのに、尖閣だの人権だの文句を言うとは何事か」とでも言いたげに、日本の主張を“非礼”と位置づけて封じ込める。これは中国古典兵法『三十六計』にある「抛磚引玉(レンガを投げて玉を引き出す)」や「笑裏蔵刀(微笑みの裏に刃を隠す)」とまさに同じ構図です。

ネタ探しと韓国ドラマ(2025年7月11日)

私は『日本経済新聞』はオンラインで読んでいますが、日曜日だけは朝日・読売・産経の3紙を紙で8023ます。近くのコンビニに出かけて、ちょうど500円。1か月で2,000〜2,500円の出費です。本当は毎日いろんな新聞を読む方がいいのかもしれませんが、金も時間も限られてますので、こんなスタイルに落ち着いています。

さて、7月6日(日)の朝刊一面の見出しは、「日比、護衛艦輸出で一致」「英で“日本軍が性奴隷”」「今なら残せる被爆の記憶」などなど。どの新聞がどれかは、読者のご想像にお任せします。ビッグニュースがない日は、各紙バラけるんですね。逆に、6月15日(日)は「日鉄100%子会社化、USスチール買収承認」と、3紙ともほぼ同じ(USチスール買収承認は2紙が採用)見出しでした。こういうとき、新聞社はネタに困らないってことなんでしょう。

…とはいえ、ネタ探しに苦労しているのは、新聞社だけじゃありません。私も同じです。ツイート、メルマガ、雑誌、書籍――何を書くか、常にアンテナを張っています。ネタは新聞や雑誌だけでなく、散歩中のひとことや、食事中の会話にも転がっているかもしれない。大事なのは、それを拾えるかどうか。

私の場合、外からのインプットは全体の2割くらいで、残りの8割は自分の中でこねくり回してアウトプットに仕上げていくタイプです。なので、読書量がものすごく多いというわけでもありません。

それに私は、原稿を書き終えてから他の人の本を読む派なんです。先に読むと、自分の発想がそっちに引っ張られてしまう気がして。なるべく自分の思考の純度を保ちたいので、まずは自分の頭で勝負する、そんなスタイルです。

ちなみに、月曜から金曜の朝8時15分から9時10分まで、テレビ東京で放送されている韓国ドラマ(王族もの)は、私にとってちょっとした“インテリジェンスの教材”です。
歴史描写の中に、権力闘争や心理戦、情報操作のヒントが詰まっている。わからない場面があればすぐに調べますし、見逃さないよう録画も欠かせません。

生活リズムは不規則そのもの。夜中にふと思いついてPCに向かうこともあれば、疲れたら昼間から寝てしまう。そんな日々の中で、この韓国ドラマが生活の“リズムの柱”になっているような気もします。

地球環境問題(3)

■ 中国の環境意識

  米国の地球環境問題を見てきましたが、中国についてはどうでしょうか。中国は急に経済発展をしたので、大気汚染、水質汚濁、森林伐採による砂漠化などといったさまざまな環境問題が発生しています。

私も2000年代初頭と2010年代初頭に中国に行きましたが、空は毎日どんよりと曇っていました。14億人近くの世界一の人口規模を抱えながら、排気規制や廃棄物収集など制度面の規制が追いついていないのですから、様々な環境問題が発生するのも仕方ありません。

PM2.5の問題、黄砂の問題は中国だけの問題ではなく、わが国も直接的な被害を受けることになります。改革開放以降、経済発展、都市化の進展と生活スタイル変化に伴い、生活ごみも増えています。

最近は中国も環境問題に熱心になったとの情報もありますが、今回のコロナ禍やかつてのSARSが最初に発生したのは中国です。この原因が衛生意識が低いとの見方があるように、決して環境問題への意識は高いとはみられません。

■ 中国の環境問題の一因は日本?

 中国の砂漠化は日本にも責任があると聞いたことがあります。日本が食べている羊肉というのは、実は中国の山羊(やぎ)だそうです。山羊が木の皮を食べるので木がダメになって砂漠するといわていました(本当かどうかわからない)。また、日本が安い中国産の野菜をどんどん買うので、中国の農家は野菜にたっぷり農薬を掛けるといいます。この話はなんとなく分かる気がします。

 要するに、グローバル社会では他国の問題点は自ら発生していることが多々あります。少し前まで、日本の廃棄される7割のプラスチックが中国やベトナム、タイ、マレーシアに輸出されていたといいます。そこで適切に処理されるわけではなくゴミ山になり、それがまた環境問題を引きこ起こす、悪の循環繰り返していたとされます。

■中国は世界最大の温室効果ガス排出国

中国は世界最大の温室効果ガス排出国です。習氏は2016年9月にオバマ米大統領(当時)とともに、地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」批准を正式発表し、その成果を世界にアピールしました。

中国はこれまで温室効果ガスの規制には消極的でした。まだ、中国は開発途上国なので規制には応じられないという姿勢を取り続けていました。しかしながら、2009年のCOP15あたりから方向性を変えました。

経済のグローバルを進めていくうえで、温室効果ガスの旗振りもやらなくてはならないと認識したことが第一の理由とみられますが、国自身の大気汚染などの環境悪化も国内安定から必要になっています。

2019年には、コロナ禍が発生した武漢で新たなごみ焼却場の建設に反対する環境デモも生起しています。この住民デモはSNSで流されるのですぐに問題となります。中国の大規模抗議活動の1/3は環境汚染関連とされます。つまり、共産党政権のアキレス腱というになります。

■中国は環境問題を政治利用

トランプ氏はパリ協定から離脱しました。2020年はコロナ禍で、トランプ氏による対中包囲網の形成の試みが進展しました。これに対して、中国は、温暖化対策一つの牽制として、国際社会の主導権を握り対抗する構えを見せまたといえます。つまり、環境問題が中国によって政治利用されました。

中国は2020年の国連総会で、2030年までに減少に転じさせ、2060年までに温室効果ガス排出を実質ゼロ(カーボンニュートラル)にする宣言しました。中間目標として、2035年にはガソリン車を撤廃するともいいました。しかし、技術的な問題から、2035年のガソリン車の撤廃は達成できるかは不透明です。

香港問題などをめぐり欧州連合(EU)が対中警戒を強めている中、中国は欧州側が伝統的に重視している気候変動対策を梃子に関係回復を図ろうとする思惑もうかがわれます。習氏は、長期目標をいかに実現するか明確にしていませんが、「各国は新たな科学技術革命と産業変革の歴史的なチャンスをつかむべきだ」と強調し、環境対応の製品・ビジネスの拡大を進めようとしています。