参議院選挙の裏の構図(2025年8月1日作成)

こんにちは。今回は、先日の参議院選挙をきっかけに、ほとんど語られない“裏の構図”に注目したいと思います。

近年、各国の選挙に対して、他国による認知戦や影響力工作の存在がたびたび指摘されるようになってきました。では、今回の日本の参議院選挙ではどうだったのでしょうか。

リベラル政党が全体的に伸び悩む一方で、参政党や保守党など、新たに登場した保守系政党が大きく議席を伸ばしました。この結果を見て、多くの方はこう考えたのではないでしょうか。

「中国が裏から関与するなんて、考えすぎではないか」

あるいは

「仮に関与があったとしても、結果は中国にとって失敗だった。むしろ良かったではないか」

確かに、表向きの状況を見るかぎり、そう考えるのは自然なことかもしれません。

でも、本当にそうでしょうか?そうした見方は、表に見える情報だけを信じることによって、逆に裏にある構図を見落としているのではないでしょう。

そこで、歴史に照らして、見えにくい戦略構造を考えるという視点から、一つの見方を提示したいと思います。決して陰謀論ではありませんよ。

前回は、日本共産党が今も統一戦線の綱領を放棄していないことを紹介しましたが、今回は中国の側がこれまで日本に対して行ってきた対外工作、特に「統一戦線」の歴史を振り返ってみたいと思います。

1960年代、中国は共産主義の同志であるはずの日本共産党と決裂しました。きっかけは、毛沢東が「日本や沖縄でゲリラ戦を展開せよ」と要求したのに対し、日共がこれを拒否したことです。その後、中国は①日共に対する分裂工作等(日共外郭団体の分裂、日共から除名された親中派人物の取り組み、日共組織から除外された団体の取り込み等)、②社会党左派勢力への接近、③保守派勢力への接近、④創価学会への接近、⑤青年団体などへの接近を行いました。

保守派勢力への接近は、六〇年安保闘争の失敗を契機に、日中国交回復に向けた土壌をつくる目的で、1960年代から開始されました。親米派の保守本流に対しては反動派として徹底した闘争方針を採りましたが、一方の反主流派に対しては親睦を名目とした接近や招待工作を強化しました。

1961年1月の社会党黒田寿男の訪中時、毛沢東は次のように語りました。

「日本政府の内部は足並みがそろっていない。いわゆる主流派と反主流派があって彼らは完全に一致していない。たとえば松村、石橋、高碕などの派閥は、われわれの言葉で言えば“間接の同盟軍”である。あなた方にとって、中国の人民は“直接の同盟軍”であり、自民党(当時、中国側は“人民党”と表現)内部の矛盾は“間接の同盟軍”である。彼らの亀裂が拡大し、対立と衝突が生じることは人民に有利だ。」

ここで重要なのは、中国がイデオロギーではなく、利用できるものを使うという実利を重視していたことです。右か左かではなく、日本社会にどれだけ影響を与えられるかを基準に、接触対象を選んでいたのです。社会の認識を揺るがす、まさに“認知戦”の先駆けはとっくに開始されていたと言えるでしょう。

では、現代の日本に置き換えてみましょう。

新たな勢力の台頭により、保守陣営全体が力を増したように見えるかもしれません。ですが、もしその動きが、自民党という大きな保守基盤を内側から分裂させるような結果をもたらしているのだとしたら、それは、むしろ中国にとって都合のよい展開と言えるかもしれません。

新興政党は、保守でもリベラルでも、基盤が脆弱である分、外部からの影響を受けやすいという面もあります。中国にとって最もやっかいな相手は、強くまとまった敵です。

一枚岩の政治勢力は、外交や防衛の場でも強い交渉力を発揮し、中国の浸透や工作を跳ね返す力を持ちます。

けれども、政治的な対立が激しくなり、保守内での対立や足の引っ張り合いが生じれば、日本の判断力は鈍り、社会には分断が生まれます。

まさにそうした“内部からの弱体化”こそが、中国の統一戦線戦略の核心なのです。

ですから、「反中を掲げる政党が伸びたから良い」と短絡的に判断することには、やはり慎重さが求められます。

今は、銃弾が飛び交う時代ではありません。見えない情報と認知をめぐる戦いが進行しています。「味方の顔をした敵」「一部の真実で信頼を勝ち取る戦略」──それこそが情報戦の基本です。

「保守だから安心」「反中だから正しい」といった単純なラベルに惑わされる時代は終わりました。私たちに必要なのは、「この構図で、最も得をしているのは誰か?」という問いを持ち続ける視点です。それを見抜けなければ、私たちは知らぬ間に情報戦の舞台で“敗者の側”に立たされてしまうかもしれません。

今回の内容はやや挑戦的だったかもしれませんが、単純な構図に流されず、より広い視野で物事をとらえるための一助となれば幸いです。

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