岩屋外相との会談にみる中国の思惑(2025年7月13日作成)

7月10日、マレーシアで日本の岩屋毅外相と中国の王毅外相が会談しました。岩屋氏は、中国軍機による自衛隊機への異常接近、レアアース輸出の制限、邦人の拘束問題などに懸念を示し、福島第一原発の処理水を巡る日本産水産物の輸入制限の撤廃も要請しました。

一方、王毅外相は「日本企業の正常な需要は保証される」と応じ、関係改善に前向きな姿勢を見せました。翌11日には、中国の何立峰副首相が大阪万博の式典に出席。BSE(牛海綿状脳症)問題で停止していた日本産牛肉の輸入再開に向け、動物検疫協定の早期発効に意欲を示しました。

こうした“譲歩”の一方で、中国軍機による異常接近や東シナ海での構造物設置など、軍事的圧力は依然として続いています。このギャップに対し、「なぜ中国は譲歩しながら挑発も続けるのか」と取材されることがあります。

けれど、これは矛盾ではありません。むしろ非常に合理的な行動です。中国は「硬軟両用」という外交スタイルを徹底しています。たとえば、軍や情報部門が圧力をかけ、外交や経済部門が融和を演出する。この役割分担により、“飴と鞭”を巧みに使い分けることで、相手の批判や抵抗を抑え込み、自らに都合の良い行動を取らせようとするのです。

米中対立が続く中で、日本との経済関係を安定させておきたい――そんな意図のもと、日本に恩を売るように牛肉や水産物の“譲歩”を見せる。だがその目的は、より本質的な戦略――領有権問題などで日本の発言力を削ぐだけでなく、実際の監視活動や行動そのものを牽制・抑止することにあります。 「こちらは牛肉を買ってやっているのに、尖閣だの人権だの文句を言うとは何事か」とでも言いたげに、日本の主張を“非礼”と位置づけて封じ込める。これは中国古典兵法『三十六計』にある「抛磚引玉(レンガを投げて玉を引き出す)」や「笑裏蔵刀(微笑みの裏に刃を隠す)」とまさに同じ構図です。

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