中国の歴史戦と万博、拙著まもなく販売(2025年8月31日)

■はじめに

先週、大阪・関西万博を見学しました。会場は人であふれ、入場ゲートには長蛇の列。人気パビリオンは事前抽選や当日抽選が必須で、なかなか入ることもできませんでした。それでも万博の高揚感は味わえた反面、掲げられた「理想」と、実際に来場者の目に映る「現実」との乖離を強く感じました。

一方で、このメルマガが配信される翌日の9月3日には、北京で「抗日戦争・世界ファシズム戦争勝利80周年記念式典」が予定されています。習近平氏が軍事パレードを主催し、プーチン氏や金正恩氏の参列も報じられています。さらにインドネシア、マレーシア、ベトナムなどアジア諸国の首脳も出席すると伝えられ、中国は「東アジアの盟主」を誇示しようとしています。

ここには、またしても日本に突き付けられる「歴史戦」の構図があります。日本政府が欧州やアジア諸国に対し、軍事パレードへの参加を見合わせるよう要請したとの報道もありますが、もし事実なら逆効果となりかねません。「歴史を反省しない国」という口実を与え、中国の思惑に拍車をかける恐れがあるからです。

平和と未来をテーマに掲げた万博と、過去の戦争を政治的に利用する歴史戦。この二つを見比べると、日本がいかに「物語を紡ぐ力」で後れをとっているかを痛感します。来場者数やイベント演出に気を取られるのではなく、アジアを中心とする青少年を積極的に招き、歴史と未来を架橋する戦略を打ち出せなかったのか――その点が何よりも残念でした。

■新著がいよいよ9月10日発売

先週のメルマガでは、新刊『15歳からのインテリジェンス』の背景として、青少年が認知戦の主要なターゲットになっている現実を取り上げました。今週は、いよいよ発売を目前に控え、さらなる本書の紹介です。

アマゾンでは版元が用意してくださった紹介ページが公開されています。非常に工夫された画像や文言で魅力を伝えてくださっていますが、残念ながら他の書籍広告に紛れてしまい、最後までスクロールしないと見つけにくいかもしれません。ぜひ一度ご覧になっていただければと思います。

しかし本当の魅力は、やはり中身にあります。『15歳からのインテリジェンス』は、中学生にも読める物語形式で描かれていますが、その背後に込めたのは「情報の洪水にどう向き合い、どう自分の意思決定に活かすか」という普遍的な問いです。つまり、本書は青少年向けの体裁をとりながら、実は大人が“自分のために”読み直すことでこそ真価を発揮する一冊なのです。

■インテリジェンスとは何か

インテリジェンスとは何か。しばしば誤解されますが、新聞記事やネットの断片を集めただけではインテリジェンスにはなりません。それは単なるインフォメーション(情報)にすぎないのです。インテリジェンスとは、情報を解釈し、意思決定に活かすための知恵であり、未来へ進む羅針盤です。

高校の教科書「情報」では、データやツールの扱い方は学べても、それをどう戦略や人生に結びつけるのかという「連接」は弱い。まさにその隙間を埋めるのがインテリジェンスなのです。

■目的があるから情報は微笑む

インテリジェンスは捜査のように「事実を突き止める」ものではありません。まだ見ぬ未来に向かって「目的」を定め、その達成に必要な情報をまず選び取ること。そこからさらに意味を解釈し、意思決定へと結びつけてこそ、それはインテリジェンスとなります。目的があるからこそ、情報は光を放つのです。

本書に登場する中学生に対し、元防衛省分析官の父親は繰り返しこう説きます。「インテリジェンスは目的から出発する」「目的が明確になったとき、情報は意味を持つ」「情報は目的のある人間にしか微笑まない」

おそらく「目的」という言葉は本書の中で最も頻出するキーワードでしょう。そしてその目的を具体化するものが「問い」です。問いを立てることで情報は初めて生き、羅針盤のように私たちを導きます。

■大人が読むべき理由

『15歳からのインテリジェンス』と銘打っていますが、実は最も大きな読者は大人であるべきだと私は思っています。なぜなら、情報にあふれる社会の中で、私たち自身こそが「目的を見失い」「問いを立てる力を鈍らせている」からです。

仕事で、人生で、あなたは今どれほどの「情報」にさらされていますか。そして、その情報を意思決定に結びつけられているでしょうか。情報に振り回される側に立つのか、情報を使いこなす側に立つのか――その分岐点にあるのは、インテリジェンスの有無です。

■隠されたキーワードを探してほしい

本書の物語はシンプルです。しかし、行間には「目的」「問い」「羅針盤」といったキーワードが巧妙に織り込まれています。どうか読みながら、それらを探し、自分自身の意思決定と照らし合わせてみてください。

『15歳からのインテリジェンス』は9月10日発売。青少年のために書きましたが、同時に大人が学び直すための書でもあります。どうか、私の新たな挑戦を応援していただければ幸いです。

次回は、9月27日に刊行予定の『兵法三十六計で読み解く中国の軍事戦略』へと話を移し、中国の現状についてお伝えします。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA