■問いの再設定とは何か
問いは一度立てれば終わり、というものではありません。問いは立てた後にこそ、その意味を何度も確かめ直す必要があります。最初に設定した問いが、本当に知るべきことを捉えていないことは珍しくないからです。これはインテリジェンスの世界に限らず、ビジネスの現場でも同じです。
「最初の問いが浅い」「方向がずれている」――そうしたズレは、問いを再設定しないかぎり気づけません。そこで必要になるのが問いの再設定です。
■なぜ問いを再設定するのか
問いを再設定する必要がある理由は、大きく二つあります。
- 最初に与えられた問いが、使用者(依頼者)が本当に知りたいこととズレている場合がある。
- 自分自身が立てた問いが、本来知るべきことを外している場合がある。
人はどうしても、最初に見えた問題をそのまま“問い”にしてしまいます。しかし、その問いが表面的であったり、思い込みに基づいていたりすることは多いのです。
■問いを再設定するための3つの視点
私は、問いを再設定するとき、次の3つを必ず確認します。
- 「本当にそうか」
- 「そもそも、この問いが必要なのか」
- 「この問いは誰のためのものか」
これらの視点を、簡単な例で説明します。
①「本当にそうか」
例:「商品Aが売れている理由は何か?」
ここで立ち止まり、「本当に知りたいのは“売れている理由”なのか?」と問い直します。
もしかすると知りたいのは、
- Aだけでなくどんな商品が売れやすいのか
- 市場全体がどう変化しているのか
といった、より広い視点かもしれません。
最初の問いを疑うことで、思考の幅が広がります。
②「そもそも、この問いは必要なのか」
同じ問いでも、「そもそも私はなぜAの売れている理由を知りたいのか?」と自問すると、
- 単に気になっただけなのか
- 新商品を開発するためなのか
- 顧客の嗜好の変化を知りたいのか
目的が変われば、必要な問いも変わります。
多くの場合、「そもそも」を探ることで新しい問いに気づきます。
③「その問いは誰のためのものか」
インテリジェンスでは使用者(政策者)と生産者(分析官)の立場が明確です。
使用者が必要としていない問いをいくら深めても、意味がありません。
ビジネスも同じです。
作り手や販売側は「なぜ本が売れないのか」と考えがちですが、顧客の視点に切り替えれば、
「客はなぜこの本を買わないのか」という問いになります。
この視点の変化だけで、得られる答えは大きく変わります。
■簡単なビジネス事例で見る「問いの再設定」
あなたは経営コンサルタントで、ある企業からこう依頼されたとします。
「新製品を開発したいので、今よく売れているものを調べてほしい」
最初の問いは「どんな商品が売れているのか」です。
しかし、ここで問いをそのまま受け取るのではなく、問いの再設定を行います。
●ステップ①
依頼者が直面している「達成すべきこと」を考える。
→ 本当に必要なのは“新製品開発”なのか?
●ステップ②
依頼者の本当の任務を探る。
→ 実は「売上を伸ばすこと」が核心であると気づく。
●ステップ③
すると、元の問いが的外れだと分かる。
「新製品の調査」だけでは売上アップに直結しない。
●ステップ④
そこで問いを再設定する。
→ 「売上を伸ばすために、どんな企画があり得るか」
●ステップ⑤
依頼者に確認する。
「知りたいのは“売れる新製品”ではなく、“売上アップの方法”ですね?」
●ステップ⑥
依頼者は気づく。
「ああ、そうか。私が本当に知りたいのはそこだった。」
この瞬間、依頼者が必要としていた問いが立ち上がります。つまり、問いの再設定によって、初めて正しい仕事が始まります。
■問いの再設定がもたらす効果
問いを再設定すると、
- 問題の核心が見える
- 思い込みから離れられる
- 誰のための問いかが明確になる
- 行動が的確になる
インテリジェンスでもビジネスでも、「正しい問い」を立てることが成果を決めます。そして、その問いは最初に立てたものではなく、問い直しによって得られるものです。
