インテリジェンス思考術(第16回)

オシント情報とは

オシントで90パーセント以上のことがわかる

前回は、オシント情報をインターネットなどで集める方法について述べました。今回は、情報収集の手段を整理したうえで、オシント情報とは何かをあらためて説明します。

情報がどこから出てきたか、その出所のことを情報源といいます。たとえば、日々接しているニュースの情報源は、新聞、テレビ、インターネットなどです。これらの情報源は、大きく公開情報源と非公開情報源に分けられます。

非公開情報源は、さらにヒューミント(HUMINT:人的情報源)と、テキント(TECHINT:技術的情報源)に区分されます。一方、オシント(OSINT)は、オープンソース・インテリジェンスの略で、公開情報源から得られる情報を指します。

非公開情報源は、政府の情報機関や軍の情報部門などに属する人しか扱えません。一般の企業人や研究者が接することは、ほとんど不可能です。しかし、それを過度に気にする必要はありません。実務の世界では、オシントだけで全体像の90パーセント以上を把握できるとされています。

実際、オシントから重要な判断が行われた例は少なくありません。1962年のキューバ危機では、ケネディ米大統領が『タス通信』の報道を手がかりに、ソ連がキューバからミサイルを撤去したかどうかを判断しました。1990年の湾岸戦争でも、米国はイラクの内部状況を把握する際にCNNの報道を重視しました。

インターネットの発達によって、世界中の公開情報に容易にアクセスできるようになりました。国際情勢の分析でも、企業分析でも、有力なオシントに触れる機会は飛躍的に増えています。

第一次情報にアクセスする

オシントを扱ううえで、もう一つ重要な考え方があります。それは、できる限り第一次情報源に遡るということです。

第一次情報源とは、ある事象について最初に情報が発せられた出所を指します。第一次情報源から得られた情報を第一次情報と呼びます。それに対して、第一次情報をもとに編集や解釈が加えられた情報は、数次情報と呼ばれ、一般にはまとめて第二次情報として扱われます。

一般に、第一次情報とは「本人が直接見たもの、聞いたもの」だと言われます。この説明だけを見ると、第一次情報を得るには、現場に行ったり、当事者に話を聞いたりする必要があるように思えます。すると、それはオシントではなく、ヒューミント(人的情報源)ではないか、という疑問が生じます。では、オシントで得られる情報は、すべて第二次情報なのでしょうか。

ここで注意すべき点は、第一次情報か第二次情報かと、オシントかヒューミントかは、同じ区分ではないということです。
第一次情報か第二次情報かは、情報がどれだけ加工されているかという「距離」の問題です。一方で、オシントやヒューミントは、情報をどのような手段で得たかという区分です。

公開情報であっても、加工されていない原資料に当たれば、それは第一次情報に近いオシントになります。つまり、第一次情報=ヒューミント、オシント=第二次情報、という対応関係が成り立つわけではありません。

たとえば、新聞記事は記者の判断や編集が加えられた二次情報ですが、記者会見の全文記録、公式声明文、統計の原表などは、公開情報でありながら第一次情報源に位置づけることができます。

書籍についても同様です。書籍そのものは、著者の整理や解釈が加わった情報であり、厳密には一次情報とは言えません。しかし、書籍には統計資料や公的文書、当時の記録などの引用元が明示されていることが多く、その引用元に当たることで、第一次情報に遡ることが可能です。数字や事実関係を確認する際には、本文よりも注や参考文献の方が重要になる場合もあります。

ウィキペディアについても、同じ考え方が当てはまります。ウィキペディアの記述自体は編集を重ねた二次情報であり、そのまま分析に使うことは適切ではありません。しかし、多くの項目では引用文献や出典が明示されています。活用すべきなのは本文ではなく、そこに示された一次に近い資料です。

逆に、第三者の解説や論評が重ねられた情報は、たとえ内容が詳しく見えても、第三次、第四次情報になっている場合があります。インターネット上に見られる多くの記事やまとめ情報は、複数の媒体を経由した伝言情報です。

情報は、伝わる過程で削られ、強調され、ときに歪められます。そのため分析では、どこで誰の判断や解釈が加えられたのかを意識しながら、情報の出所をたどる必要があります。

事実か、意見かを確かめる

情報を扱う際、最後に確認すべきなのは、その情報が事実なのか、それとも意見や評価なのかという点です。

第一次情報源に近いからといって、その内容がすべて事実であるとは限りません。公式声明や記者会見で語られる内容も、多くの場合は当事者の認識や主張です。出来事そのものと、出来事についての意見は、明確に分けて考える必要があります。

オシントでは、事実の記述と意見や評価が同じ文脈で語られることが少なくありません。そのまま受け取ってしまうと、分析は容易に誤った方向へ進みます。

重要なのは、「これは何が起きたという事実なのか」「これは誰の意見や評価なのか」
を一つひとつ切り分けることです。

オシントの実務で求められるのは、情報を大量に集めることではありません。事実と意見を見分けること。まずは、そこから始めるべきです。

今回はここまで

今回は、オシントを用いた情報収集について整理しました。
公開情報であっても、どこまで加工されているのか、事実と意見がどう混ざっているのかを意識するだけで、見える景色は大きく変わります。

オシントは、単に「ネットで調べること」ではありません。公開情報の中から、一次に近い情報を探し出し、事実と評価を切り分けて読むこと。それだけで、状況の大枠は十分に把握できます。

次回は、現地で見る、聞くといったヒューミントについて述べます。オシントとヒューミントは対立するものではありません。それぞれに役割があり、使いどころがあります。
その違いと注意点を整理していきます。

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