情報の処理の技法
前回は、情報の収集について、ヒューミントに焦点を当てて解説しました。今回は、集めた情報をどう扱うか、という話になります。これまでと重なる部分もありますが、復習として読んでください。
▼情報はデータベースとして蓄積される
情報処理は、情報分析の重要な一過程です。
ベトナム戦争の際、米軍が撮影した大量の航空写真が机の引き出しに山積みになり、整理されないまま使われなかった、という指摘があります。もし体系的に整理されていれば、多くの兵士の命を救えた可能性がある、とも言われています。
情報は集めるだけでは意味を持ちません。
選別し、分類し、評価し、保管して、はじめて使える形になります。
こうした過程を経て、情報はデータベースとして蓄積されます。国家機関だけでなく、大企業や学校も、それぞれ独自のデータベースを持っています。ただし、膨大な情報を整理し続けるには時間と労力がかかります。そのため、国家組織では、専門部門が処理を担うのが原則です。
データベースに情報を入力する際は、日付だけでなくキーワードも付けます。
たとえば北朝鮮のミサイル関連情報であれば、「北朝鮮」「ミサイル」「技術」などの語を一緒に入力します。キーワードを付けると、その情報は一定の性質で検索できるようになります。ここでは、この性質を「属性」と呼びます。
▼情報は「劣化」する
情報は生ものです。時間がたつと価値が下がります。
1957年に『Strategic Intelligence Production』を著したワシントン・プラット准将は、戦術情報は6日で価値の半分を失い、道路や橋梁などの地誌情報は6年で半減すると述べました。
今日では、技術や市場、社会の動きが速いため、劣化の速度はさらに速いでしょう。ビジネスの情報はなおさらです。
したがって、できる限り新しい情報に接し、古い情報は更新しておくことが原則です。
ただし、新しい情報が常に正しいわけではありません。新情報に引きずられて、妥当だった分析を安易に変えることは避けたいところです。
新情報の情報源は信頼できるか。
どのように収集され、どの経路で伝達されたのか。
既存情報と照合して、何が変わったのか。
変化を生むような環境の変化はあったのか。
こうした点を一つずつ確認します。
▼情報の評価と情報源の評価は異なる
情報処理の一環として、情報を評価します。
評価は大きく二つに分かれます。
- 第一に、情報源の信頼性(Reliability)
- 第二に、情報そのものの正確性(Viability)
情報源の信頼性とは、情報を出した相手が信用できるか、別の情報源で裏づけが取れるか、という点です。
ただし、信頼できる情報源であっても誤ることがあります。意図的に虚偽を流すこともありますし、伝達の過程で内容が変わることもあります。
したがって、情報源の信頼性と、情報の正確性は分けて判断します。両者は必ずしも一致しません。
一例として、ウィキペディアはよく議論に挙がります。不特定多数のボランティアが執筆するため、情報源としての信頼性に疑問が出ることがあります。
その一方で、2005年に科学誌『Nature』は、科学分野の記事の正確性が『ブリタニカ百科事典』と大きくは劣らない、という趣旨の報告を紹介しました。多くの人の目にさらされ、誤りが修正され続ける、という側面があるためです。
つまり、情報源の性格と、情報そのものの正確性は別問題です。
情報は集めるだけでは意味がありません。
整理し、時間による劣化を意識し、評価を分けて考える。
この「処理」を丁寧に行うかどうかで、分析の質は変わります。
▼今回はここまで
今回は、情報の処理について整理しました。情報源の信頼性と、情報の正確性は分けて判断することが大切です。次回は、情報の取扱いについて、もう一段深めていきます。
