インテリジェンス思考術(第9回)

問いの再設定とは何か

問いは一度立てれば終わり、というものではありません。問いは立てた後にこそ、その意味を何度も確かめ直す必要があります。最初に設定した問いが、本当に知るべきことを捉えていないことは珍しくないからです。これはインテリジェンスの世界に限らず、ビジネスの現場でも同じです。

「最初の問いが浅い」「方向がずれている」――そうしたズレは、問いを再設定しないかぎり気づけません。そこで必要になるのが問いの再設定です。

なぜ問いを再設定するのか

問いを再設定する必要がある理由は、大きく二つあります。

  1. 最初に与えられた問いが、使用者(依頼者)が本当に知りたいこととズレている場合がある。
  2. 自分自身が立てた問いが、本来知るべきことを外している場合がある。

人はどうしても、最初に見えた問題をそのまま“問い”にしてしまいます。しかし、その問いが表面的であったり、思い込みに基づいていたりすることは多いのです。

問いを再設定するための3つの視点

私は、問いを再設定するとき、次の3つを必ず確認します。

  1. 「本当にそうか」
  2. 「そもそも、この問いが必要なのか」
  3. 「この問いは誰のためのものか」

これらの視点を、簡単な例で説明します。

「本当にそうか」

例:「商品Aが売れている理由は何か?」

ここで立ち止まり、「本当に知りたいのは“売れている理由”なのか?」と問い直します。
もしかすると知りたいのは、

  • Aだけでなくどんな商品が売れやすいのか
  • 市場全体がどう変化しているのか
    といった、より広い視点かもしれません。

最初の問いを疑うことで、思考の幅が広がります。

「そもそも、この問いは必要なのか」

同じ問いでも、「そもそも私はなぜAの売れている理由を知りたいのか?」と自問すると、

  • 単に気になっただけなのか
  • 新商品を開発するためなのか
  • 顧客の嗜好の変化を知りたいのか
    目的が変われば、必要な問いも変わります。

多くの場合、「そもそも」を探ることで新しい問いに気づきます。

「その問いは誰のためのものか」

インテリジェンスでは使用者(政策者)と生産者(分析官)の立場が明確です。
使用者が必要としていない問いをいくら深めても、意味がありません。

ビジネスも同じです。
作り手や販売側は「なぜ本が売れないのか」と考えがちですが、顧客の視点に切り替えれば、
「客はなぜこの本を買わないのか」という問いになります。

この視点の変化だけで、得られる答えは大きく変わります。

簡単なビジネス事例で見る「問いの再設定」

あなたは経営コンサルタントで、ある企業からこう依頼されたとします。

「新製品を開発したいので、今よく売れているものを調べてほしい」

最初の問いは「どんな商品が売れているのか」です。
しかし、ここで問いをそのまま受け取るのではなく、問いの再設定を行います。

ステップ①

依頼者が直面している「達成すべきこと」を考える。
→ 本当に必要なのは“新製品開発”なのか?

ステップ②

依頼者の本当の任務を探る。
→ 実は「売上を伸ばすこと」が核心であると気づく。

ステップ③

すると、元の問いが的外れだと分かる。
「新製品の調査」だけでは売上アップに直結しない。

ステップ④

そこで問いを再設定する。
「売上を伸ばすために、どんな企画があり得るか」

ステップ⑤

依頼者に確認する。
「知りたいのは“売れる新製品”ではなく、“売上アップの方法”ですね?」

ステップ⑥

依頼者は気づく。
「ああ、そうか。私が本当に知りたいのはそこだった。」

この瞬間、依頼者が必要としていた問いが立ち上がります。つまり、問いの再設定によって、初めて正しい仕事が始まります。

問いの再設定がもたらす効果

問いを再設定すると、

  • 問題の核心が見える
  • 思い込みから離れられる
  • 誰のための問いかが明確になる
  • 行動が的確になる

インテリジェンスでもビジネスでも、「正しい問い」を立てることが成果を決めます。そして、その問いは最初に立てたものではなく、問い直しによって得られるものです。

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