西半球で進む別の変化(3月30日配信)


中東情勢に関心が集まっています。その一方で、西半球では別の変化が進んでいます。最近の報道によれば、キューバでは電力供給が維持できなくなっています。首都ハバナでは、1日に20時間を超える停電が発生しています。燃料不足により、ごみ収集車は動きません。街中にごみが放置され、生活環境が悪化しています。バスは運行できず、移動は制限されています。病院では処置の優先順位が変わり、日常的な医療も維持できなくなっています。

キューバの発電は燃料に依存しています。燃料の流入が落ちると、発電量はそのまま落ちます。電力が低下すると、交通、衛生、医療の順に影響が広がります。都市の機能が段階的に低下しています。

▼西半球戦略としての一体性
アメリカ合衆国は西半球での影響力の維持と、中国の関与の制約を進めています。2026年1月には、ベネズエラに対して軍事行動を行い、マドゥロ政権を崩しました。米国は同国の産油と輸出の経路に手を入れました。これにより、エネルギーの供給側に変化が生じ、中国に対しても圧力がかかります。

キューバは米国本土に近接しています。この位置に外部勢力の拠点が形成されると、情報と影響の面で負担が生じます。1960年代には、キューバ危機でこの問題が表面化しました。現在も、中国による対米情報収集拠点の存在が指摘されています。

キューバは石油資源を持ちませんが、地理的位置に意味があります。米国は、この地域が中国やロシアの影響下に入ることを避けようとしています。

▼米国の措置と供給経路
米国はベネズエラでは軍事行動により供給側を直接コントロールしました。一方、キューバに対しては資源の流れに制約をかけています。

キューバはベネズエラ産の原油に依存しています。米国によるベネズエラへの軍事介入は、この供給経路の遮断を意味します。さらに、米国は第三国による代替供給に対して、決済、保険、対米関係のリスクを通じて圧力をかけています。

他方で、民間部門に限定的な供給を残しています。その結果、発電や公共サービスに回る燃料が先に不足します。電力と輸送が止まり、生活環境が悪化します。政府部門と民間部門の間に差が生じ、統治に影響が出ます。

▼静かなハイブリッド戦の構図
現代のハイブリッド戦では、有事と平時、軍事と非軍事の区別が重なります。

中東では、イランに対して軍事行動が用いられています。攻撃対象は明確で、結果は短期間で現れます。

その一方で、西半球のキューバでは、資源と経済を通じた圧力が用いられています。燃料供給に制約がかかり、発電と輸送が止まり、都市機能が低下します。変化は時間をかけて進みます。

同じ時期に、異なる地域で、異なる手段が並行して用いられています。一方では軍事行動が行われ、他方では経済と資源を通じた圧力が進みます。これらは同時に進む一つの対立です。

▼日本と企業への視点
日本にとって、中東は石油資源の観点から重要です。ホルムズ海峡やバブ・エル・マンデブ海峡が使えない場合、中東からの輸送は制約されます。

この場合、船舶は代替経路を選びます。主な経路は、アフリカ南端の喜望峰を回る航路です。また、オーストラリアや他地域からの供給への依存が高まります。

この航路は距離が長く、輸送日数が増加します。船腹に余裕がなくなり、輸送効率が低下します。その結果、世界の海運全体で再配分が起きます。

船会社は、確実に通航できる経路に船舶を集中させます。西半球で東西を結ぶ主要経路であるパナマ運河への依存が高まります。通航需要が増えれば、待機日数と通航料が上がります。

この運河は水量に依存しています。降雨の変動により通航枠が制限されることがあります。需要の集中と水量制約が重なると、物流の遅延はさらに拡大します。

このように、中東の海峡の不安定は、西半球の運河にも影響します。日本の企業は、エネルギーだけでなく、航路の変化による輸送日数、在庫、保険、運賃の変動に対応する必要があります。

現代の対立は、一つの地域だけを見ても把握できません。複数の地域と複数の手段が同時に動きます。

▼情報をどう読むか(インテリジェンスの視点)
国際情勢は一つの地域だけでは理解できません。全体を俯瞰し、複数の地域の動きを同時に見る必要があります。

停電は結果です。この結果の背後には、資源の流れと政策の変化があります。こうした兆候から、次に起きる変化を読み取ることが求められます。

そのためには、複数のシナリオを用意し、それぞれに対応する兆候を整理する必要があります。どの兆候が現れたときに、どの方向に進むのかを事前に考えておくことが重要です。

(了)

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