最近、レアアース禁輸の話が出てから、メディア、野党議員、経済界の人たちが口をそろえて言います。
「高市総理は発言を撤回すべきだ」
「撤回しなければ日中関係はおさまらない」
ただ、不思議なことがあります。誰も、撤回の中身を言わないのです。
撤回とは、何をすることなのでしょうか。
国内向けに言い直すことなのか。
中国に説明を入れることなのか。
それとも、中国の主張を認めることなのか。
ここが語られないまま、「撤回しろ」という言葉だけが飛び交っています。
少し具体的に考えてみます。
もし「撤回」の中身が、「台湾有事で集団的自衛権は使われない」
という意味なら、話は分かります。
さらに言えば、
「台湾は中国の国内問題だ」
「米国が関与する前提は成り立たない」
「日本に存立危機事態は生じない」
こうした考えを、日本の総理に言わせたい。そういう意味になります。
ただ、これをそのまま言葉にした瞬間、多くの国民は首をかしげるでしょう。
「それ、本当に日本の安全につながるのか」
「米国との関係はどうなるのか」
「中国の言い分を先に認める必要があるのか」
だからでしょうか。誰も、この文章案を口に出しません。
代わりに使われるのが、
「撤回」
「配慮」
「関係改善」
便利な言葉です。中身を書かなくても、批判した気分になれます。
レアアース禁輸についても同じです。
「撤回しなければ経済が困る」
「日中関係が悪化する」
では、何を撤回するのか。
日本は、どこまで言葉を引っ込めるのか。
どこから先は言ってはいけないのか。
ここは語られません。
たぶん、多くの人は分かっています。
中身をはっきり書くと、自分の立場が国民に説明できなくなることを。
だから、意味は共有したまま、言葉だけをぼかす。
主張が正しいかどうかは、別の話です。
対中関係を重視する考えも、あり得ます。
ただ、
撤回という言葉だけを投げて、
中身を言わないのは議論ではありません。
それは提案ではなく、雰囲気づくりです。
「撤回すべきだ」と言うなら、
こう言えばいい。
「台湾有事は日本の問題ではない」
「中国の立場を日本は尊重する」
「その代わり、経済の安定を取る」
それを言えないなら、
撤回という言葉に、意味を詰め込むのはやめた方がいい。
最近の議論を見ていると、
日中関係が不安定なのか、
言葉の使い方が不誠実なのか、
分からなくなることがあります。
少なくとも一つ言えるのは、
撤回の中身を言わない限り、
賛成も反対もできない、ということです。
議論をしたいなら、
まず文章を書きましょう。
話は、それからです。
