高市新内閣発足――「学歴」という尺度で見た実像

10月21日、高市早苗新内閣が発足した。公明党の連立離脱という異例の経緯を経て、自民党は維新の会との閣外協力に踏み切った。掲げたのは、積極財政と議員定数の削減。政権の看板は「経済再生と政治改革の両立」だが、布陣を細かく見ると、もう一つの特徴がある。評価の尺度はいくつもある。政策理念や派閥バランス、人事の意外性など、どこに焦点を当てるかで印象は変わる。だが、ここでは「学歴」という冷たい指標から見てみたい。確認できる範囲で、閣僚十八人のうち少なくとも七人が東京大学出身だ。比率にしておよそ四割。これは近年の内閣としては際立って高い。

具体的には、林芳正(総務)、茂木敏充(外務)、片山さつき(財務)、平口洋(法務)、鈴木憲和(農林水産)、赤澤亮正(経済産業)、城内実(経済財政・規制改革)らが東大卒である。多くが旧大蔵省や旧外務省など、官僚出身の政治家だ。首相自身は神戸大学出身だが、政権の中枢を東大法学部を中心とするエリート層が固めている構図である。

かつて「政治主導」が唱えられた時代もあったが、今回の内閣はむしろ官僚機構と似た思考訓練を受けた政治家たちが再び中心に立ったように見える。財務・法務・総務・外務という制度運営の中核ポストに、訓練されたエリート層が配置されているのは偶然ではない。

もちろん、学歴が政治の力量を保証するわけではない。だが、国家の意思決定を担う人々がどのような環境で思考を鍛え、どんな知的文化を共有してきたのかをたどれば、政策判断の方向性はある程度読める。東大という同じ教育空間で育った人々が、似た前提や価値観を持っているとすれば、それは政権の思考の枠組みそのものになる。

国民の中には「政治家はバカだ」「官僚がすべて決めている」と言う人もいる。しかし現実には、政治家の学歴水準は官僚より高い。問題は知能ではなく、どのような判断軸で国を動かすかだ。高市内閣の構成を見る限り、これは“感覚の政治”ではなく、“理性の政治”を志向する布陣である。

積極財政と改革路線をどう両立させるのか。その成否を占う前に、まずは政権の知的輪郭――誰が、どんな思考で国家を動かそうとしているのか――を見極める必要がある。

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