半導体は複雑に見えるが、ロジックツリーで整理すればその全体像は比較的単純である。まず、半導体を「古いか、新しいか」で大きく二つに分ける。長年使われてきたものをレガシー半導体と呼び、近年世界的に注目されているものをアドバンスド半導体と呼ぶ。本稿では後者に焦点を当てる。
アドバンスド半導体の二分法
アドバンスド半導体は大きく「情報を扱うもの(情報系半導体)」と「電力を扱うもの(電力系半導体)」に分けられる。
- 情報系半導体は、データを処理したり記憶したりする役割を担う。
- 電力系半導体は、電気を制御したり外界を感知したりする役割を持つ。
この二分法を起点にすれば、個々の半導体がどこに属するのかが理解しやすい。
情報を扱う半導体
情報系半導体はさらに二つに分けられる。
第一は処理系である。
処理系の代表はCPU(Central Processing Unit)である。CPUは「汎用の演算装置」であり、あらゆる計算や制御を少しずつ順番にこなすことが得意である。パソコンやサーバーの中心にあり、システム全体の動作を司る。
これに対し、GPU(Graphics Processing Unit)は、大量の演算を同時並行に行うことが得意である。もともとは画像処理用に発展したが、現在ではAIの学習や解析など膨大なデータを一斉に処理する用途で不可欠になっている。
さらに登場したのがAI専用チップである。これはNPU(Neural Processing Unit)やTPU(Tensor Processing Unit)と呼ばれるもので、AIの計算処理に特化して設計されている。GPUよりも効率よく、低消費電力でAI演算を行えるよう最適化されている。
またSoC(System on a Chip)は、CPUやGPU、通信機能など複数の回路を一つにまとめた統合チップである。スマートフォンに搭載される半導体はほとんどがSoCであり、これ一つで通信・計算・グラフィック表示までを担う。
このように処理系は「頭脳」といっても、一つの役割だけではなく、汎用の司令塔(CPU)、大量処理の職人(GPU)、AI専用の特化型(NPU/TPU)、そして多機能を一体化した万能選手(SoC)と、役割に応じて多様化しているのである。
第二は記憶系である。
記憶系の中心はDRAM(Dynamic Random Access Memory)である。DRAMは「作業机」にたとえられることが多く、データを一時的に置いて高速に読み書きする。電源を切れば中身は消えてしまうが、その分処理速度が極めて速い。PCやスマートフォンが快適に動くかどうかは、このDRAMの性能と容量に大きく依存している。
NAND型フラッシュメモリは、電源を切ってもデータが消えない「不揮発性メモリ」である。スマホのストレージやSSD(Solid State Drive)に使われ、写真やアプリを保存する。DRAMより速度は遅いが、大容量かつ安価で、長期保存に向く。
さらに近年重要性を増しているのがHBM(High Bandwidth Memory)である。HBMはメモリチップを縦方向に積み重ねて配置する技術により、従来のDRAMよりもはるかに広いデータ転送帯域を実現している。GPUやAIチップに直結し、AIの学習やスーパーコンピュータのような「超大規模データ処理」で威力を発揮する。
つまり記憶系も一様ではなく、一時的で高速な作業机(DRAM)、長期保存の倉庫(NAND)、超高速処理用の特別席(HBM)というように、用途ごとに棲み分けがなされている。
補足:AI半導体とは何か
近年「AI半導体」という言葉が頻繁に用いられている。これは厳密な技術区分ではなく、AI処理に最適化された半導体群を総称する呼び方である。
ロジックツリー上では、主として「情報系 → 処理系」に属する。GPUはその代表例であり、NPUやTPUなどのAI専用チップもここに含まれる。またAIの計算処理には膨大なデータを扱う必要があるため、HBMのような記憶系メモリも不可欠であり、広い意味ではAI半導体の基盤に含められる。
さらに、AIは外界の情報を取り込む必要があるため、イメージセンサーやLiDARなどの感知系、電力を制御するパワー半導体とも密接に連携して動作する。したがって「AI半導体」とは単独の部品を指すのではなく、AI処理を中心に据えた半導体群全体のエコシステムを指す言葉と理解すべきである。
電力を扱う半導体
電力系半導体も二つに分けられる。
第一は感知系である。
代表例はイメージセンサーである。イメージセンサーは光を受け取り、それをデジタルの画像データに変換する部品であり、人間にたとえれば「目」に相当する。スマートフォンのカメラ、自動車の車載カメラ、監視カメラや医療用内視鏡など、現代社会のあらゆる場面で不可欠となっている。
このほかにも、加速度センサーやジャイロセンサーは動きや傾きを検知し、スマートフォンの画面回転や自動車の安定制御に利用される。マイクに組み込まれるMEMSセンサーは音を電気信号に変換し、音声アシスタントやスマートスピーカーを可能にしている。さらに自動運転車に搭載されるLiDARセンサーは、レーザーを用いて周囲の空間を三次元的に把握する。これらはすべて「現実世界をデジタルに翻訳する」装置である。
第二は制御系である。
パワー半導体(SiC, GaN, IGBTなど)がその典型である。これらは電流や電圧を効率的に変換し、モーターを回したり電力を供給したりする。電気自動車や再生可能エネルギーの分野で特に重要性が高まっており、人間でいえば「筋肉」に相当する。
まとめ
以上のように、半導体はまず「レガシーかアドバンスドか」に分けられる。さらにアドバンスド半導体は「情報を扱うもの」と「電力を扱うもの」に大別でき、それぞれが「処理/記憶」「感知/制御」という四つの機能に細分される。
情報系では、CPU・GPU・AIチップ・SoCといった処理系、DRAM・NAND・HBMといった記憶系が互いに棲み分けを持って機能している。電力系では、イメージセンサーをはじめとする感知系が現実世界をデジタルに変換し、パワー半導体がエネルギーを制御して社会を動かしている。
「AI半導体」という言葉は、この体系の中では処理系を中心としつつ、記憶系・感知系・制御系と連携して初めて機能するものと理解すべきである。AI半導体は単独のカテゴリーではなく、AIという用途を軸に束ねられた半導体群の呼称なのである。
