朝日新聞は28日朝刊一面で「国連のイラン制裁きょうにも再発動 安保理 中ロの阻止案否決」と報じた。
だが読者の多くが直感的に抱く疑問はこうだろう。「国連安保理の制裁は全会一致が必要なのでは?」
実は今回の動きは、2015年のイラン核合意(JCPOA)に付随したスナップバック方式によるものだ。これは通常の安保理決議とは逆の仕組みで、合意参加国が「重大な不履行」を通報すると30日間の審議に入り、その間に「制裁解除を継続する決議」が可決されなければ、自動的に制裁が復活する。常任理事国の拒否権を無力化するために考案された“逆転条項”である。
もともと対イラン制裁は2006年以降、米・英・仏・露・中がすべて賛成する全会一致で成立してきた。その後、2015年に決議2231号が採択され制裁は大幅に解除された。しかし米国が2018年に一方的に合意を離脱したことで体制は崩れ、今回は英・仏・独の通知に基づくスナップバックが動き出した。中国・ロシアは阻止決議を提出したが否決され、制裁再発動が現実のものとなった。
ここで問題になるのは正当性と実効性だ。形式上は安保理決議に基づくため加盟国は拘束される。だが中国・ロシアは「従わない」と明言しており、制裁の網は大きく緩む。さらに米国はすでに合意を離脱しているため、「発動資格があるのか」という疑義も消えない。制度は合法でも、国際社会の分裂を前提にした制裁は正統性に影を落とす。
そして最も注目すべきはイランの対応である。イランは「スナップバックは無効」と突っぱね、中国・ロシアの後ろ盾を得て核開発を加速させる構えだ。すでに濃縮度60%のウランを保有しており、核兵器製造に必要な90%までの距離は短い。西側の圧力が強まるほど、イランは中露との経済・軍事協力を深め、「東方志向」を戦略の柱に据えるだろう。
制裁は形式的には復活しても、現実には抜け穴を通じて骨抜きになりかねない。むしろ重要なのは、「制裁が効くかどうか」よりも、制裁を正統とみなす欧米と、無効を主張する中露・イランのせめぎあいが、国際秩序そのものを揺さぶるという点にある。
