■米価が再び高騰か?
さて――お米の収穫時期となり、再び米価の高騰が懸念されています。お米が5キロ5000円。この値段をどう受け止めるべきでしょうか。農家にとっては収入増につながる朗報のように見えますが、国民の「米ばなれ」を加速させ、結果として市場の縮小につながるかもしれません。飲食業界も同じです。原材料費の高騰から値上げせざるを得ないが、値上げすれば客足が遠のく。結局、消費者の収入が増えなければ、こうした悪循環からは抜け出せません。
■米国の関税政策へのアナロジー
この構造は、国際政治にも重なります。米トランプ政権は国内産業を守ろうと関税を引き上げました。短期的には国内生産を下支えしますが、同時に消費者価格があがり、消費が冷え込み、市場そのものが縮小してしまう可能性があります。グローバリズムがもたらした「安い商品」の恩恵と、その裏で進行した米国内での雇用・賃金の圧迫、直接かつ即時的な“即効薬”は、副作用を伴う危険があり、はたして有効な処方箋となるのでしょうか。
■ロシア・ウクライナ戦争を複雑化している要因
そして、この「即効薬と副作用」の関係は、ロシア・ウクライナ戦争にもはっきりと現れています。西側諸国はロシアに対して経済制裁という“外科手術”を施しました。金融制裁や資産凍結、エネルギー取引の制限――狙いは即効的な圧力でした。しかし実際には、ロシアは代替市場を開拓し、逆に欧州はエネルギー価格高騰という副作用に苦しめられています。制裁の効き目は限定的で、十分な効果を発揮していないのです。
その一方で、欧州が進めているエネルギー依存脱却の取り組みは“体質改善”にあたります。時間はかかりますが、ロシアへの依存構造を見直すことで長期的な安定を目指すものです。外科手術と体質改善――どちらか一方ではなく、両者の組み合わせが問われているのです。
■ 私たちの課題
トランプ前大統領の対ロシア姿勢も、この文脈で理解できます。彼はロシアに対して硬軟両用の外科手術的圧力を試みていますが、抜本的な手術には踏み込んでいません。その結果、効果は生じていません。では「抜本的な外科手術」とは何か。それはNATOを通じた本格的な軍事圧力でしょう。しかしそれは、誤れば致命的な衝突を招くリスクを孕んでいます。したがって、判断は容易ではありません。
要は、外科手術をどこまで行うのか、体質改善とどう組み合わせるのかです。その判断を誤れば、経済も安全保障も悪循環に陥る――これこそ、私たちが直面する大きな課題なのです。
