■はじめに――
この数年、本を書くたびに「書くこと」と「届けること」はまったく別の挑戦だと痛感しています。筆は進む。むしろ書きたいことは尽きません。しかし、伝えたい核心が読者に届くまで道のりは、想像以上に険しい――。
そんな中で、この9月、私は新たに2冊の本を世に送り出します。アマゾンでは先週から予約販売が開始されました。
◆『兵法三十六計で読みとく中国の軍事戦略』
――「戦わずして勝つ」思想が現代に甦る
この本は、私の過去十数冊の中でも「間違いなく渾身」と胸を張れる一冊です。中国の戦略思想を、兵法三十六計という古典から現代地政学へと橋渡しし、台湾侵攻や尖閣占有の現実的シナリオにまで踏み込みました。
実は9年前にも三十六計をテーマに本を出しましたが、その時からずっと「戦略像としての物足りなさ」が心に引っかかっていました。そこで今回は、作っては壊し、壊しては作る――そんな試行錯誤を重ね、構想が固まるまでに一年を費やしました。
計略を本来の順番に取り上げ、これは現代のこうした状況に整合するという思考ではなく、「平時」「グレーゾーン」「有事」という烈度の軸で計略を再編成。孫子や他の兵法書も織り込み、兵法を“立体的な戦略思想”として描き直しました。
台湾有事が現実味を帯び、尖閣周辺で中国公船の活動が続く今、中国の意図を読み解くための羅針盤としてあなたの手元に置いてほしい――。そんな一冊になりました。
この本は、現代中国の軍事戦略の奥深さと巧妙さ、戦に明け暮れた歴史の醍醐味、そして兵法の知恵を同時に学べる一冊です。
読み終えたとき、きっとニュースや国際情勢の見え方が一変し、事象の背後に埋もれていた意図や構図が鮮明に浮かび上がるはずです。
◆『15歳からのインテリジェンス』
――物語で体験する「情報の見きわめ方」
「高校教科書『情報』では、ITやコンピュータなどが扱われ、偽情報をどう見抜き、情報源をどう評価し、戦略に直結するインテリジェンスをどう作成するかがほとんど扱われていない」――この危機感こそ本書誕生の原点です。
実は、この本はアマゾンでコンピュータ・ITジャンルに分類されています(8月15日現在)。そもそも、インテリジェンスは、日本語の「情報」と同じ意味ではないし、コンピュータやITという意味はありません。ところが、日本では「インテリジェンス」を安易に「情報」と訳すために、AIがジャンルを振り分けるとはいえ、このような誤解や齟齬が生じてしまうのです。
学校や社会で教えられる「情報リテラシー」といえば、せいぜいPC操作やSNSのマナー、簡易的なファクトチェック程度。しかし現実の世界は、もっと〝性悪説〟で動いています。国家や組織は、相手の情報を盗み、意図的に偽情報を流し、認知戦を仕掛ける。そして、その格好の標的となっているのが青少年です。
本書の物語は、こうしたシビアな現実をそのまま描いてはいません。それでも、インテリジェンスの本来の意味と価値を、大人から子どもへと手渡す必要がある――その思いが、物語創作の出発点となりました。
私は、中高生にもすっと届く形で、本来のインテリジェンスとのふれあいを体験できる一冊を作り上げようと思い、その手がかりを求めて、日本昔話やアンデルセン童話、グリム童話などを渉猟しました。しかし、いずれも途中で「これでは届かない」と行き詰まりました。そんなとき、ふとひらめきました。既存の物語に頼るのではなく、自分で“昔話”の世界を創ればいい――と。
そして一気に物語が立ち上がります。切り出しは明治時代。トム・ソーヤが日本を訪れ、徳川の財宝を探す大冒険に乗り出す。物語はそこから時を超え、現代へ。主人公のひとりは、そのトム・ソーヤの子孫である日本の中学生。もうひとりは、私の娘をモデルにした少女。そして彼女の父親として登場するのは、20年前の私自身?――。
タイトルは“青少年向け”ですが、真のターゲットは大人です。トム・ソーヤをモチーフにした物語形式で、フェイクニュースや偏った情報の洪水とどう向き合うかを、読者自身が体験できる構成にしました。
◆情報の海を渡るための二つの羅針盤、ここに。
インテリジェンスを「歴史と計略から読み解く」か、「物語として体験する」か。その根底に流れている思いは同じ。ニュースがあふれ、真実と虚構が入り交じる現代にあって、あなたに「情報の時代を生き抜くための、自分だけの物差し」を手にしてほしい。この2冊が、そのための力添えになることを願っています。
来週号では、『15歳からのインテリジェンス』の中身を少しご紹介します。
