米国がG20もCOPも離れ始めた――その空白を中国が埋める

米国が不参加を明言

2025年11月7日、ドナルド・トランプ米大統領は、11月22〜23日に南アフリカ・ヨハネスブルグで開かれるG20サミットに対し、「米政府関係者は誰も出席しない」と明言しました。理由として、南ア政府がアフリカーナーに対して土地の違法没収や迫害を行っていると主張しました。

また、11月10日からブラジル・ベレンで開かれるCOP30でも、米政府は代表を送っていません。米国は、自らが主導してきた多国間協議に対し、明確に「参加しない」という姿勢を示したことになります。

制度の“所有者”から“離脱者”へ

米国は長年、G20やCOPといった国際協議を、自国が議論を主導し、自国の利益に沿う形で制度を動かすために活用してきました。しかし近年、これらの制度が米国にもたらす利得が、かつてほど大きくなくなっています。

気候変動の議論では、途上国支援や気候資金が中心となり、新興国やアフリカ諸国の発言力も増しました。米国が従来のように議題を主導する余地は狭まり、交渉の重心は“南”に移りつつあります。米国政府が「気候交渉は詐欺だ」という発言を行う背景には、制度への不信と、制度外で自国の利益を確保しようとする姿勢の強まりがあります。

今回の不参加は、米国が「制度の内側で主導を握る国」から、「制度そのものに距離を置く国」へと立場を変えつつあることを象徴しています。

空白を狙う中国とグローバル・サウス

米国が制度から離れると、そこに必ず空白が生まれます。その空白を最も積極的に埋めようとしているのが中国です。

中国は、COPやG20の場で南アフリカやブラジルを含む途上国との協力を深め、気候支援や貿易を通じて自らの影響力を広げています。米国の不在が目立つほど、中国が議論の方向性をつくりやすくなります。

さらに中国は、「米国は多国間協議に後ろ向きだ」という構図を同盟国や周辺国に示し、自らを代替的な枠組みとして提示する可能性があります。米国の不参加が単発の出来事ではなく、制度そのものから距離を置く流れの一つと見るなら、中国の動きは国際秩序の今後を考えるうえで重要な兆候となります。

日本にとっての課題

結局、今回の問題が日本に突きつけているのは、日米同盟を基軸としながら、多国間協議にどう向き合い、日本の存在感をどう維持するかという課題です。

日本は軍事面で米国と協力しつつ、外交の場では自らの発信力を落としてはなりません。国際協議で日本の立ち位置が弱まれば、国内で説明してきた「国際貢献」の内容にも説得力を持たせにくくなり、同盟を支える世論にも影響します。

さらに重要なのは、中国が国際協議の場で影響力を大きくし、それを国内外の政治に利用しようとしている点です。COPやG20での発言力は、中国が「責任ある大国」という姿勢を示し、台湾やアジアで主導権を握ろうとする際の強力な後押しになります。

中国は、米国と日本の立場の違いをよく見ています。米国が距離を置く協議の場で、日本が十分に発信できなければ、その状況を利用して「日本は地域の声に向き合っていない」といった批判を展開し、対日政策の一部として活かす可能性があります。

G20やCOP30をめぐる今回の動きは、国際協議の場が“米国が必ず中心にいる場所”ではなくなりつつあることを示しています。そして、中国がその変化をどう自国の力に変えようとしているかを読み解くことが、日本にとっての実質的な安全保障・外交上の関心事です。

メッセージ:ニュースの裏側を読む

ニュースの表面だけを見れば「米国が参加しなかった」という一行で終わります。しかし、その裏側では、主導権を争う動きが静かに進んでいます。

日本が注視すべきは、“なぜ米国が制度から距離を置き始めているのか”という点だけではありません。もっと重要なのは、その空白を中国がどのように利用し、自国の立場をどう強化し、日本にどのような圧力として跳ね返してくるのかという点です。

表側のニュースの裏側にこそ、逃してならない重要なニュースが潜んでいます

(了)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA