インテリジェンス思考術(第14回)

枠組みの設定方法

前回は、「影響要因とは何か」「枠組みや影響要因の数はどの程度が適切か」「支配要因とは何か」について解説しました。
今回は、それらの前提となる枠組みを、どのように設定するのかを扱います。

枠組みは、思いつきで決めるものではありません。問いを分解し、要素を洗い出し、整理と統合を行う中で形づくられていきます。

枠組み設定の出発点は「問いの分解」

米CIAの元副部長が著した
『CIA極秘分析マニュアル「HEAD」』では、
問いを立てた後に、ドライバー(ボックス)を設定することが重要であると述べられています。

ただし、この書籍では「ドライバー」という言葉を、分析対象を区切る意味でも用いています。
私はこれまで述べてきた整理に合わせ、分析の範囲を定めるものを「枠組み」と呼んでいます。

同書では、次のような例が紹介されています。以下では、趣旨が伝わるよう、表現を整理して説明します。

「顧客はどのような車を購入するか」という問いに対し、
顧客がいきなり広告やパンフレットを見て、ホンダ、フォード、スバル、トヨタ、GMといった特定のブランド選定に走るのは、時間の無駄である、と指摘しています。

そこで問いを、

「どうすれば、家族向けの良い車を購入できるか」と

家族の顧客に絞って、問いを分解します。
そのうえで、

  • コスト
  • 信頼性
  • チャイルドシートの適合性
  • 安全性
  • 車の大きさ
  • 燃費

といった機能別の枠組み(同書ではドライバー)を設定します。

これは、問いの焦点を絞り、さらにその問いを機能別に分解することで、分析の対象となる枠組みを明確にした例です。

つまり、枠組みの設定とは、問いを分解し、分類し直す作業だと言えます。

フレームワークを使った問いの分解

問いを分解する際に役立つのが、3Cや4C、PESTといった既存の分析フレームワークです。
これらは答えを出すための道具ではなく、問いを多面的に分解するための補助線だと考えてください。

たとえば、次の問いを考えてみましょう。

問い:

あの商品は、なぜ売れているのか。

この問いに対して、いきなり影響要因を考え始めると、

視点が偏ったり、思いつきに引きずられたりしがちです。

そこでまず、たとえば3Cを使えば、顧客、競合、自社という三つの視点から問いを分解します。

顧客の立場からは、
・顧客は何を基準に商品を選んでいるのか、
・価格、品質、利便性のうち、どこに価値を感じているのか、といった点を問いとして掘り下げます。

競合の立場からは、
・競合は同じ条件で価格や品質を提示できているのか、
・競合が対応できていない制約や弱点はどこにあるのか、
・どの層や市場で差が生まれているのか、
といった点を確認します。

自社の立場からは、
・自社はどの点で他社と異なるやり方を取っているのか、
・その違いは、資源、体制、工程、意思決定のどこから生まれているのか、
そして、それは継続して維持できるものなのか、
といった問いを立てます。

このように、3Cを使うとは、単に顧客・競合・自社を頭に置くことではありません。
それぞれの立場に立って、問いを一段具体化することなのです。

この作業を通じて、価格、商品特性、生産・供給、購買者といった論点が浮かび上がり、後に枠組みとして整理されていきます。

重なりと関係を見る

3C、4C、PESTといった複数のフレームワークを使って分解すると、一見すると雑多な要素が並びます。

しかし整理してみると異なるフレームワークを使っているにもかかわらず、
同じ要素や、言い換えに近いキーワードが何度も現れることに気づきます。

たとえば、

  • 価格
  • コスト
  • 原材料費
  • 仕入れ条件

といった要素は、顧客の視点からも、競合の視点からも、
経済環境の視点からも現れます。

このように、繰り返し現れる要素は、問いに対して影響力が大きい可能性があります。

さらに、要素同士の関係にも注目します。

原材料価格の上昇は、製品価格、生産規模、供給量と連動します。

このように、因果関係や相関関係によって一緒に動く要素は、個別に扱うのではなく、まとめて捉える方が有効です。

枠組みへ整理・統合する

ここまでの作業を経ると、大量にあった要素やキーワードは、いくつかのまとまりに整理できます。

たとえば、

  • 価格に関する枠組み
  • 商品特性に関する枠組み
  • 生産・供給に関する枠組み
  • 購買者に関する枠組み
  • 原材料や調達条件に関する枠組み

といった具合です。これが、枠組みです。

枠組みとは、分析の範囲を定めるために、分解した要素を束ね直したものだと言えます。

枠組みの数をどう絞るか

前回述べたとおり、枠組みの数は、判断や情報収集に使うことを考えると、
5つから6つ程度が適当です。

これ以上多いと、情報収集の対象が広がりすぎ、分析の焦点がぼやけます。

逆に少なすぎると、問いに答えるために必要な視点が欠けてしまいます。

枠組みを絞るとは、要素を切り捨てることではありません。
散らばった要素を、扱える単位に束ねることです。

グループで枠組みを設定する場合

枠組みの設定は、
グループ作業として行うこともあります。

その場合は、
最初から全員で一つの枠組みを考えるのではなく、
視点を分けて分業する方法が有効です。

たとえば、

  • あるグループは顧客の視点から
  • 別のグループは市場や競合の視点から
  • さらに別のグループは生産・供給の視点から

それぞれ問いを分解し、
枠組みや要素を抽出します。

その後、すべてを持ち寄って整理します。

投票によって、
重要だと感じられる枠組みを選ぶ方法もあります。

ただし注意が必要です。
参加者の属性によっては、
顧客目線の枠組みに票が集まりすぎることがあります。

そのため有効なのは、
枠組みを出したチームとは別のチームが評価や投票を行う方法です。

こうすることで、
自分たちの発想を自分たちで正当化する循環を避けられます。

投票はあくまで補助的な手段であり、
最終的な整理と判断は、分析として行う必要があります。

今回はここまで

今回は、枠組みをどのように設定するのか、その基本的な考え方を解説しました。

枠組みは、最初から決めるものではありません。問いを分解し、要素を洗い出し、
重なりと関係を見て、最後に整えるものです。

問いの設定と枠組みの設定が終わって、はじめて情報収集が可能になります。次回からは情報収集の話をします。

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