新著を発刊します(4月14日)

約1年半ぶりの新著の発刊です。今回のタイトルは『情報分析官が見た陸軍中野学校』です。昨日の4月13日からアマゾンで予約募集を開始しました。その内容については、本ブログ「情報分析官が見た陸軍中野学校」で紹介しています(現在3/5回まで)。

また、固定ページの「上田篤盛の本」でも掲載しました。久しぶりに固定ページを編集したので、編集の仕方(アマゾンとのリンクの貼り方など)を忘れて、しばらく〝格闘〟しました。

新著は私にとって、これまでのどの著書よりも、もがき苦しみました。そこで私の気持ちを次のように表現しました。

「中野学校を一冊の著書として刊行しようとした過程では、理解力や筆力の欠如から、中野学校の実相あるいは先人たちの労苦を表現しきれない挫折感を覚え、執筆を中断したこともあった。だが、筆者の友人の支援、中野関係者および出版社のご厚意で、五年の歳月をかけて、ようやく一つの形にすることができた。少々大袈裟ではあるが、本書は自身の内面と向き合い、先人たちの崇高な精神をあれこれ分析する資格もない自らの〝未熟さ〟を自覚し、また〝葛藤〟と戦い抜いた末の書なのである。」(本書から引用)

ところで、歴史と向き合うのは大変です。先行研究や既存の著書などを参考にするにしても、書く人によって事実が微妙に異なります。当然、解釈は大いに異なります。私自身もバイアスがありますし、意図的にある種のメ―セージをそこに織り込みますので、全体的な主張でのバランスには苦慮します。

説がほぼひとつならば問題はありませんが、1928年の張作霖爆殺事件のように最近になってソ連犯行説が出てくるとやっかいです。私は歴史家ではないので、とちらが正しいか断定する力量はありません。そこで、「これまでの定説である河本大作大佐が犯人としたら、…」、「一方、ソ連の情報機関の仕業であったとしたら…」、といった具合に両仮説を前提に論理を展開するしかありません。

しかし、歴史に詳しい方は「絶対に・・・・・である」というような強い主張をお持ちであるので、それに反する見解を述べようとすると、「勉強不足」とのお叱りを受けることになります。

本人が書いた手記は第一次情報なので正しいかと言えばそうではありません。自己評価によればりっぱな人物も、他の人から見ればそうでもないのです。たとえば、関東軍情報部長を歴任した土居明夫中将の手記などを見ると、辻正信大佐、服部卓四郎大佐などはかなり変わった人物と思っていまいます。しかし、第三者の手記を読むと、辻はさておき、服部は大変バランスの取れた好人物であり、むしろ変わり者は土居中将であったと評価されています。

手記は一般に脚色され、「自己を正当化し、仲が良い人は高く評価する」傾向にあります。これは歴史に限らず、現実の社会でもそうですが。

要するに、過去の歴史書も疑ってかからないといけません。権威ある歴史家の説が正しいとは限りません。だから、当時の状況や周辺環境を思い浮かべながら、自分が置かれている現実に照らして、「おそらく、こうだろう」という前提の下で論理を展開するほかないのです。

私の歴史との向き合い方は、真実を探求することではありません。歴史から現代の教訓を導き出すことです。他方、「真実を追求せずして、なんの教訓か!」という論理も正しいでしょう。しかし、結局、判断するだけの知見がない私には、これこれを前提とするならば、このような仮説が成立し得る、というような形でで教訓を導くしかないのです。

まあ、このようなこともあって、過去の日本軍のことや、中野学校のことを書くことに大変苦労しました。

新著ではとりわけ陸軍中野学校の精神教育に焦点を当てました。自分がたいして精神修養などしていないにもかかわらず、中野学校の精神教育や中野出身者の精神を語ったわけですから、誹りを受けるかもしれません。

昨今、少子化の趨勢の中で、良質な隊員を確保して、安全保障に万全を期すことは容易ではありません。当時も、陸軍は作戦重視であって、なかなか容易に良質な情報要員は確保できませんでした。そこに現代との類似性を見出し、教訓を得ようとしました。

陸軍中野学校の創設者たちは、陸軍士官学校出ではなく、一般大学出身者などに採用ターゲーットを絞りました。彼らの軍人に凝り固まらない自由で柔軟な発想力に期待したのです。しかし、一般社会で過ごした軍人らしからぬ彼らに、軍人さらに秘密戦士としての愛国心をいかに涵養するかが課題でした。彼らの精神性を高めたのが中野学校での精神教育でした。

今日、サイバー脅威などの高まりから、優秀なハッカーを国家や自衛隊で確保する試みが取り沙汰されています。愛国心なき諜報員は二重スパイという問題があるように、愛国心なきハッカーは困ります。彼らの愛国心、使命感、責任感はどのように涵養するのか、これも問題となってきます。その意味でも一度、中野学校でどのような精神教育が行われたのかを読んでいただきたいと思います。

引っ越ししています(3月31日)

現在、私は人生最後(?)かもしれない引っ越しの最中です。大型家具等の引っ越しはまだですが、新居への住民票の移転、郵便物の配送変更届、ガス、電気、インターネット、携帯電話(ついでに携帯電話も変更)の新設と廃止の手続き、はたまた新居での内装などやることがたくさんあります。

これまで引っ越しは何回かやりましたが、もの忘れも多くなったせいか、過去にやったことのある銀行口座の住所変更届などのやり方が思い出しません。最近(随分前からですが)、銀行で別の生命保険会社との契約を結んでいたり、銀行と関連するクレジット会社や信用会社が違っていて、銀行へのの届け出だけではダメなのです。

やはり、順調に進むのは市役所での住民票、印鑑登録証の移転、免許の住所移転などの窓口で直接対応していただくものです。話せばわかるではないですが、やはり私は会話でないと理解ができないようです。

電話でオペレーターとお話ができればと思うのですが、クレジットカード会社、インターネット会社など多くは、音声自動ガイダンスになっています。電話をかけてもオペレーターにはなかなかつながりません。「○○秒○○円でご案内します」と言われ、ガイダンスが示す番号や、こちらのクレジットカードの番号などを入力し、やっとたどり着いた先は、私が知る必要もない音声ガイダンスが流れる、まったく役に立ちません。顔の見えないガイダンスに腹を立てても仕方がありませんが、まったく住みにくい生活になったものです。

電気の使用に関しても、東京電力以外のところに変えて、それなりに使用料は下がっているのかもしれませんが、対応窓口が一つではなく、たらいまわしにされます。しかも、前のところと言うことが違う。インターネットも別の会社が一部業務を委託している関係から、カスタマーサービス一発で問題解決になりません。

内装のためにホームセンターに行っても、従業員不足なのか、店内に店員さんがあまりいません。広い店内を「ダボはどこにあるんだ」とブツブツ言いながら店内を徘徊する始末。昔は、うるさいくらいまでに店員さんが対応してくれたの・・・・。

日本の自動決済の普及率は中国、韓国などに遅れを取っているようです。自由・民主主義の国では個人のプライバートーなどが尊重されます。そこで、国家に監視される制度は妥当なのかという議論がメディアで提起され、そういうこともあって、マイナンバーカードも普及も容易ではありません。

プライバーシーを守りながら様々な生活をオンラインで済まそうとするから複雑になります。中国のような国家が国民監視することが当たり前の社会では、プライバシーは尊重されないが、例えば特定のカードをかざすだけで問題が解決するといった生活の利便性があります。ふと、どちらがいいのかと思ってしまいます。

はたして自由・民主主義体制と権威主義体制、世界はどちらに向かうのか。AIが発達して、人間が考えることが少なくなり、一部の権力者や高度技術者にすべてお任せします、それが最も便利でストレスフルな社会なのではないかなどと思ってしまいます。他方、そうなった場合、なんのために生きているのか、人生とは何かなど別の悩みも生まれてきそうです。

『ハイブリッド戦争 ロシアの新しい国家戦略』の読後感

慶應大学教授、廣瀬陽子氏の『ハイブリッド戦争 ロシアの新しい国家戦略』を読みました。壮大な「グランドストラテジー」の下で、ち密なロシアのハイブリッド戦略を解説する良書です。今、我々が直面しているサイバー脅威や情報戦に立ち向かうための「インテリジェンス・リテラシー」を高めるために、是非とも手に取っていただきたい著書です。

平易な文章で分かりやすく書かれているので1日か2日で読破できます。

 本作は「プロローグ」と「エピローグ」が秀逸です。「プロローグ」では本書の全般紹介のほか、最近、〝謎の人物〟として話題になっている、エフゲニー・プリゴジン氏について書かれています。彼は2016年の米大統領選挙でスティーブ・バノン氏などとともに、よく耳にするようになった人物です。

 同大統領選挙では、ロシアによるトランプ氏支持のためのサイバー攻撃(ロシアゲート)が注目されました。そこでは、「インターネット・リサーチ・エージェンシー(IRA)」、​「コンコルド・マネージメント&コンサルティング」、「コンコルド・ケータリング」などの得体のしれない会社が暗躍しました。これらを裏で操っていた人物がプリゴジン氏です。

 彼は「プーチンのシェフ」と呼ばれ、最初にレストランと仕出しビジネスを立ち上げたのですが、本書でより詳しい彼の経歴を知ることができました。

 詳細は割愛しますが、9年間も刑務所につながれていたような不良人物がクレムリンとの人脈を築き、プーチンに近づき、裏社会のボスに一挙に上り詰めます。いったいどのような手口だったのか、皆さんも興味があるのではないかと思います。そのきっかけの一つががロシアのハイブリッド戦争を現場で支えた民間軍事会社(PMC)の「ワグネル」社(2014年設立)の経営関与です。そこに現代ロシアの裏側を見る〝わくわく感〟を覚えました。

 彼は本書の随所で登場しますので、本書を小説のような感覚で一挙に読むことができました。まさに、プリゴジン氏が本書の「シェフ」として、絶妙な味付けをしています。

 エピローグでは、世界を席巻しているパンデミック禍の中での「ロシアの下心」について描かれています。むろんエビローグなので全章のまとめとなります。

 著者はロシアがコロナ禍の中で積極的な支援外交を展開したことに言及され、欧米がこの支援外交を「ハイブリッド戦争」と警戒していることを紹介されています。著者は、この支援外交が「ハイブリッド戦争」だとは言えないものの、それほどロシアの「ハイブリット戦争」が世界から注目されていることの証左であるとの見解を述べられています。

 そのことを踏まえ、ロシアのハイブリッド戦争の効果について総合評価されています。ハイブリッド戦争は目に見えない部分が多く、それぞれの戦術・戦法の関連性が不明であり、因果関係が複雑なので、評価は容易ではありません。非常に困難である評価を敢えて行われたことに敬意を表します。

 その評価も客観的で納得できるものでした。評価自体は割愛しますが、①エストニアへのサイバー攻撃、②ジョージアへのハイブリッド戦、③ウクライナでのクリミア侵攻、④米国大統領選挙の関与、⑤シリア介入について、の5つの事例を取り上げ、各々を「成功と失敗」の両面から分析し、部分評価を下し、そのうえで総合的な評価を下されています。非常に読み答えがあります。

 また、世界が「ハイブリッド戦」にどのように対抗すべきかを、『シャドウ・ウォー 中国・ロシアのハイブリッド戦争最前線』の著者であるジム・スキアット氏の解決案を紹介しつつ、筆者自身の見解を提示されています。なお、私は現在この本も読書中です。

 最後は、わが国がどうすべきかということで締めとなっていますが、本来は行われるはずであった東京オリンピックに対するロシアのサイバー攻撃の計画があっことを改めて取り上げ、我が国の危機意識の欠如を指摘されています。一方で、今日の日本政府の取り組みに対する肯定評価もされています。このあたり、〝期待値も含めて〟といったところでしょうか。

 以上のようにプロローグとエピローグを読むだけでも大変勉強になりますが、やはりロシア研究の一人者としてオーソドックスな分析手法に大いに感服しました。第1章とは第2章は、ハイブリッド戦争の全体像の解説と、そのなかでも主流というべきサイバー戦(宣伝戦・情報戦)の解説なので、さらりと読ませていただくとして、やはり第3章の「ロシア外交のバックボーン」が本書の最大のキモであると思います。

 ロシア研究の第一人者である著者が、地政学の見地から、プーチン氏の「グランド・ストラテジー」を描き出し、これを踏まえて、ロシアにとっての勢力圏に対する外交アプローチ、ロシアが米国に対してどのようなことを狙っているのかなどを解説されています。2016年の大統領選挙や昨年の大統領選挙にまで、なぜロシアが国家的介入を行ったのか、「なるほど。う~ん」と唸らされる思いです。

 続く、第4章ではロシアの地域戦略、つまり重点領域を明らかにし、さらにロシアの戦略・戦術を多角的に展開しています。第5章では、アフリカをハイブリッド戦争の最前線であるとして、一転して焦点を絞った分析が行われています。ここに本書のメリハリが存分に発揮され、魅了されながら読書を進めることができました。

 著者も述べられているように、私も「最近のアフリカといえば、中国の進出が顕著というイメージ」を持っていましたので、ロシアが地政学の視点から巧みなアフリカアプローチを展開している状況は大変勉強になりました。

 著者によれば、ロシアは権威主義政権による「国内の抑圧」などに対する支援(「グレーゾーン」に対する「安全保障の輸出」)はPMCを使って国際批判をかわし、軍事分野での進出を筆頭に、経済分野よりも政治分野の方を優先させるとあります。この点は、中国とはやや異なる点であると興味を持ちました。

 私は若干、中国について研究していますので、ついつい中国とロシアを比較してしまいます。著者は、「ロシアは火種のないところに炎上を起こさせる力はないとされる一方、火種を見つけ、それつけこんで炎上させることに長けており、その際、ハイブリッド戦争的な手法はきわめて有効に機能してきた」と述べられています。ここにロシアのやり口が凝縮しているように思えます。

 一方、私に言わせれば「中国は火のないところに煙を立てる。これは「無中生有」という「兵法三十六計」の一つである。やり方である。それが国際社会に対する反中感情を引き起こしている」と感じています。

 これらに最近の両国の力の差を感じるととともに、中国は舌戦によって「喚く」、ロシアは裏でひっそりと「○殺」するといった、歴史文化の違いがあるのだと言ったら、少し言い過ぎでしょうか。

 最後になりましたが、著者には個人的にも意見交換などさせていただきおり、ますますのご発展を祈念申し上げます。

あけましておめでとうございます。

皆様、あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします。

昨年は私の諸般の事情がありましてブログを中断していましたが、今年は再開します。昨年はコロナ禍に見舞われましたが、雑誌取材や講演依頼などはほぼ順調でした。どうもありがとうございました。

これも、一昨年に出版した『武器になる情報分析力』と『未来予測入門』の効果のようです。昨年は、私の環境変化などで一冊も新刊を出版できなかったのですが、今年はなんとか一冊は出版したいと考えています。

四五年来の書き溜めたものをすでに整理していますので、出版もまもなくだと思います。その節には、このブログでご紹介させていただきますので、ご贔屓に願います。

今年はスマホを利用して、外出先などで気軽に近況ブログなどを書き、その後、自宅で時々修正(更新)したいと思います。

皆様、今年一年よろしくお願いします。

拙著『未来予測入門』が「TOPPOINT」12月号で選出

拙著が「TOPPOINT」12月号の 「一読の価値ある新刊書」に選出されました。

「TOPPOINT」のホームページには以下のように掲示されています。

私どもは、1987年に、新刊書を紹介する月刊誌「TOPPOINT」(トップポイント)を 創刊いたしました。以来、30年以上にわたって、
“1冊の本”との出合いが、ビジネスを、人生を、変える!
そう信じて、毎月、「一読の価値ある新刊書」を厳選して、
その内容を紹介しております。

世の中には、たった1冊の本と出合ったことで、その後のビジネスや人生が大きく変わったという経験を持つ人たちが多数おられます。
しかしその一方で、
「書店で本を探すヒマがない」
「これだけ新刊書が多ければ、どれを読めばよいのかわからない」――
こんな声が多く聞かれるのも事実です。

小誌「TOPPOINT」は、忙しいあなたに代わって、
毎月大量に発行される新刊書の中から、「一読の価値ある書」を厳選して
紹介することを使命と考えております。

毎月大量に発行されるビジネス関連の新刊書や、文化、教養に関する新刊書など、100冊前後を吟味します。 熟読した書籍の中から、「切り口や内容が新鮮なもの」「新たな知恵やヒントが豊富なもの」など、おすすめのビジネス書を10冊厳選します。 (以上、引用終わり)

拙著は10月16日に出版しましたが、新書にもかかわらず、内容が少し専門的で、一般読者用にブレークダウンできていなかったかなと反省しておりましたが、非常に嬉しい知らせでした。

「TOPPOIN」は定期頒布物で書店では販売されていません。大半の読者が経営者ということで、「軽めの本」よりも、どちらかといえば「重厚な本」のほうが好まれるということでした。企業の方々にお読みいただき、私の思考法が少しでも参考になると思っていただければ、嬉しいです。

なお、拙著が紹介された12月号を送っていただき拝読しました。現在、ビジネス本も読み始めた私にとって非常に参考になる所がありましたので、来年1月から1年間定期購読することにしました。

過日、講談社現代新書から拙著が発売

 10月16日、拙著『未来予測入門』が出版されました。

 本書をお読みいただいた私の知人から、「若人に捧げる元防衛省情報分析官が解く、インテリジェンスで人生100年時代を生き抜く法」という、ありがたいネイミングもいただきました。

 著名な作家である佐藤優先生からは、日刊ゲンダイ「週末オススメ本ミシュラン」 にて、拙著を紹介していただきました。佐藤先生、どうもありがとうございました。

https://www.nikkan-gendai.com/articles/columns/2134

 今回は初の新書ということで、できるだけ分かりやすく書いたつもりですが、それでも私の子供たち読ませて感想を聞くと、やはり内容が難しいようです。以前に上梓した『戦略的インテリジェンス入門』においては、難しい内容を平易に説明しているとの意見がある一方、難しくてよくわからないとの講評もありました。今度は、新書なのでより理解できるように心がけましたが、本当に人に分かりやすく伝えるのは容易ではありません。

  ただし少々の言い訳が許されるとすれば、情報分析や未来予測など、そもそもが「分からなこと」が前提になっているので、その手法や思考法は決して単純ではありません。以前、私が解説文を投稿した『CIA極秘分析マニュアル「HEAD」』においては、著書(CIAテロ対策センター・元副部長)は、「重要なことは楽に身につけられない」と言っています。 難しいと思う方は、その気持ちを少し我慢して、読んでいただければと思います。

 私が読む本の6割以上は一読して理解できるものではありません。でも何回か読みなおしたり(全文でなくパラパラでも)、ある別の本を読んだ後などにはすっと理解できることがあります。その時、この年になっても自分の知的レベルが上昇していることに少し満足感が生まれます。

 今回の著書では未来予測の手法が実際的に理解していただけるように、筆者とその子供たちが対話によって未来予測の技法を学ぶというスタイルを取っています。

 実は、我ながらよくぞ斬新なアイデアを思いついたものだと、 自己満足に浸っていたのです。そうしたら、自衛隊時代の後輩が 「現役時代に読んだ『戦術入門』みたい、とチラッ思いました」 との所感を送ってくれました。

 その『戦術入門』は1佐の教官だか連隊長だったかが、 2尉や3尉の若手幹部との問答のなかで戦術の原則事項を教える、 という内容でした。  

 筆者も若手幹部の時代がありましたから、この本は当然のごとく読みました。つまり、 若手幹部時代に読んだ『戦術入門』の内容が私の潜在意識として頭の片隅に残り、これが今回、どのようなことをどのように書こ うかと懊悩していた時に想起されたのかもしれません。  

 よくベテランになるほど、「不透明な時代には論理よりも創造 が大事だ!」とか「スキルよりセンスだ!」という言う人がいます。しかし、いきなり創造力やセンスが生まれるわけではないと思います。

 実は、過去に学んだことが潜在意識として残り、それに何らか の“スイッチ”が加わることで直観が生まれ窮地を脱したりすることがあるのです。それを「神がささやいた」などと総括 していますが、実はこの直観も過去における経験や論理的思考などの成果だと言えます。  

 ところで直観はどのようにして高めるのか、その秘訣はあるのでしょうか?

 北岡元先生の著書『【速習!】ハーバード劉インテリジェンス仕事術-問題解決力を高める情報分析のノウハウ』に、某消防署の大隊長B氏の話が出てきます。B氏は、あわや消防隊員が命を落とす寸前に「退避!」という命令を出します。「九死に一生を得た」隊員が、大隊長に「どうして、あのように絶妙なタイミングで退避の指示が出せたのですか?」とたずねます。

 大隊長は「正直言って、オレにもよく分からない。神秘的だね。強いて言えば直観かな。すぐさま退避しないとやばいということを、直観が教えてくれたんだ」と答えます。

 そこで、北岡氏は「隊員がB氏のような直観を得られるか?」、「B氏は自分でも分からない直観をどうやって教えられるか?」という「問い」を読者に投げかけています。

 そのうえで北岡氏は、「結論から先に言うと、B氏が現場で突然得た直観を、隊員が具体的に学ぶことは十分に可能である。なぜなら直観は、決して神秘的なものではなく、科学的に説明することができるものだからだ。具体的にいうと、直観とは広範かつ高速な「パターン認識」が原動力となって生じる。問題は、それがほぼ無意識の状態で働くために、結果として生じる直観を事後的に説明できなくなつてしまうことだ。(以下、略)」

 つまり、直観で判断したことを「何となく変だ」と思ったことはなかったか自問すれば、「何となく変だ」という「パターン認識」が高速で行われていたに過ぎないということになります。

 消防士は火災現場を経験することでパターン認識を身につけていきますが、「消防官が経験を積んでいない段階でも、B氏が「パターン認識」から直観を得たことを説明してやれば、説明がない場合に比べて、消防官は、はるかに素早くバターン認識ができるようになる。」と北岡氏は述べています。

 そして、「どのような分野でも大切になるのは、直観でうまくいったり、失敗したりするときに、その直観はなぜ生じたのかを振り替えてしっかりと考えることだ。そうすることで、高速すぎてほぼ無意識のうちに行っていた「パターン認識」が見えてくる。それを自覚することで、直観に頼る性向は増え、失敗は減る。さらに部下に、仕事でどのようなパターンに気おつけるべきか、教えることも可能になる」と述べています。

 拙著でも、読者の方に未来予測のノウハウを身につけて欲しいとして、同じようなことを述べています。

 「皆さんの周りで、仕事ができる人、物事の先を読 むのに長けている人がいるかもしれないが、そういう人はたいて い、私が本書で述べるテクニックを駆使して(あるいは知らずし らずのうちに使って)思考・分析を繰り返しているのである」 (拙著より引用)。

 ようするに仕事ができる人は「パターン認識」を高速に行っているのです。そのような優れた「パターン認識」を可視化、形式知化したものがマニュアル本であり、拙著もそれが狙いとしています。

 しかし、マニュアル本を一度読んだからといって自分が「パターン認識」が向上するはずはありません。マニュアル本に書かれていることを自分の実務や生活に落とし込み、少しでも実践してみる。そして自分流のパターン認識や思考法を確立することが重要です。

 

本日、講談社現代新書から拙著が発売

▼拙著『未来予測入門』(講談社現代新書)が発売

本日(10月16日)から拙著『未来予測入門』(講談社現代新書)が発売されました。本書は5つの章からなり、第 1章「未来予測とは何か」、第2章「情報分析とは何か」、第3 章「未来予測のための情報分析ツール」、そして第4章から第6 章までは「未来予測ケーススタディ」です。

第3章では、未来予測のための個人モデルを紹介しています。 これは、インテリジェンス・サイクルのCIAモデルなどを基に 編み出したオリジナルであり、(1)問いの設定、(2)枠組みの設定、 (3)収集&整理、(4)現状分析&未来予測、(5)戦略判断の5つから なります。  

そして、これら各段階に対応する必要な思考法&分析手法として、 (1)問いの再設定、(2)アウトサイド・イン思考&フレームワーク 分析、(3)システム思考、(4)クロノロジー(年表)分析、(5)マト リックス分析、(6)アナロジー思考、(7)ブレーンストーミング& マインドマップ、(8)四つの仮説案出、(9)シナリオ・プランニン グを特出して、それぞれを解説しています。  

 第4章から第6章では、それぞれ「将来有望な職種・スキルと は」「未来のベストセラーを特定せよ」「2030年の暮らし方・ 働き方を予測する」と題し、上記の9つの手法を使ったケーススタディを試みています。  

 ここでは、防衛省を退職した私が、我が子供たちに分析手法を教えるという対話スタイルを採用しました。子供たちの疑問や質問に対し、筆者が分析手法を伝授しながらその疑問を解消し、答えに導いていくというものです。  

 実は、ここに登場する子供たちは私の実在する三人の娘をモデ ルにしています。娘たちに父親としてどんな助言が適切か、脳漿 を絞ったといっても過言ではありません。

 編集長やフリーライター氏の協力を得て、これまでにない味わいの作品に仕上がったと自負しています。お読みいただければ嬉しいです

▼ エンリケさまの紹介文

  「軍事情報メルマガ」を主催されているエンリケさまが私の著書を紹介していたくださいました。いつも過分な称賛で少々恥ずかしいのですが、一部を引用させていただきます。

 こんにちは、エンリケです。

 4章~6章が本書の白眉です。父と娘、息子の対話形式で、「情報分析手法を実際にどう使うか?」をわかりやすく案内しています。

 「問い」に対する「答え」を導き出す。それが情報分析手法を人生に活かすことです。情報のプロが使う手法が、自分の人生とつながっている証左なんです。

 また、情報のプロが記した一般向け情報教養本で、ストーリーが使われた解説は、私が知る限り本書が初めてでしょう。ストーリー作りってのは実はむつかしいものです。上田さんも、相当苦労して作られたんじゃないだろうか?と推察します。

 さて上田さんのインテリジェンス本で特筆される特徴の一つが「読み手が情報分析スキルを使えるようになる」という点です。第一作以来刊行された本に一貫して流れている上田さんならではと言ってもよい特徴で、「上田スピリッツ」と名付けて差し支えないといえます。

 本著にもこのスピリッツはもちろん流れており、その道のプロの意見を待つのでなく、自分で結論を導き出す国民になるためのスキルをコンパクトな新書でありながら、惜しみなく教えてくれます。ぜひあなたも手に取って、実人生で活かしてほしいです。(以上10/14掲載)

 

 今日は<すべての情報分析は「質問=問い」の設定から開始される>(P33)という名言についてお伝えしようと思います。

 そもそもあなたは、分析したいことに対する「問い」を持っていますか?分析して何を達成したいのでしょうか?

 ちなみに私のばあい、ここが極めてあいまいでした。だから、常に拡散してしまい、収拾がつかなくなるという流れをいつも辿ってきたわけです。

 私が上田さんの既刊書を通してイチバン学んだのは実はこの点でした。「適切な問いがなければ、適切な分析はできない」ということです。逆にいえば「適切な問いがあれば、適切な分析につながる」ということなんでしょう。

 本著でも上田さんは<情報分析は必ず「問い」の設定から始めるべきであり、未来に関する予測もその例外ではない>(P42)とおっしゃっています。実はこの点こそ、われわれ一般人の情報分析で、最も欠けているところではないか?と感じてなりません。そのために不可欠な「情報分析するときの、適切な問いの作り方」を解説した書は、私が知る限りこれまでなかった気がします。

 少なくとも私は、上田さんの著作でこのことを初めて知り、いろんな情報分析、未来予測へのチャレンジの場で意識できるようになりました。こんかい、この本の42P~45Pを読み、腑に落すことができたように感じます。(以上10/15に掲載)

 きょうは、今年6月に発売された、上田さんの『武器になる情報分析力』と本著を比べてみたいと思います。

 ひとことでいえば、『武器になる情報分析力』が対象とする課題は安保問題、『未来予測入門』のそれは個人の身の回りの問題という感じでしょうか。けっきょく、使うツールや手法はカブるのですが、昨日もお伝えした「問い」が違うわけです。

 戦略テーマが違えば問いも変わる。着眼点も微妙に変わってくる。上田さんというプロが、痒いところに手が届く感じで細やかに解説しているからそのあたりの違いをつかめるんですね。両書ともに読むとわかります。だから、『武器になる情報分析力』をお持ちの方には、ぜひ手に取ってほしいわけです。本著を手に取った方には、『武器になる情報分析力』も手に取ってほしいです。

 私も含めた一般人は、もちろん安保戦略問題に関心はあります。でも、自分の将来をはじめとする身の回りのことの見通しも持っておきたいものです。上田さんの最新刊『未来予測入門ー元防衛省情報分析官が編み出した手法ー』は、軍事ファンやマニアではない人向けに書かれています。

その点で物足りない人もいらっしゃるかもしれません。が、その分、語り口がひじょうにわかりやすいんです。ファンやマニアの方も、情報分析の基礎の基礎が定着できる点でおススメなんですね。(以上10/16に掲載)

エンリケさま、いつもありがとうございます。

  

近日、講談社現代新書から拙著が発売(2)

前回の続きです。本日は書影が完成したので、その紹介をします。

ここに紹介しますのは未来予測のための「個人モデル」の思考サイクルです。オリジナルですので、もちろん、どの書籍にも載っていません。

組織としてのインテリジェンスサイクルはCIAモデルなどがすでに提示されています。それは、1-計画・指示、2-収集、3-処理、4-分析・作成、5-配布の順となります。

つまり、政策決定者などの使用者から1の計画・指示が出され、収集部隊などが情報の収集を開始します。

このインテリジェン・サイクルを個人モデルにそのまま置き換えると、上級者から1のか「計画・指示」に替る「何か書いてみない」との漠然としたオーダーが出て、いきなりの2の情報を集めようとします。

これでは、効率的な情報収集とはいえませんし、氾濫している情報の渦に巻き込まれて身動きができなくなります。さらにはガサネタに踊らされるかもしれません。

そこで必要になるのが①の「問い(問題)の設定」なのです。実は、これが私が以前所属していた組織の若手分析官はできていませんでした。だからプロダクトがなかなか書けないのです。これは上司の指導上の問題でもあります。

この点の重要性は前著『武器になる情報分析力』でも強調しましたが、今回はより身近なテーマで、 ケーススタディでにより①についての要領を解説しています。

①の「問いの設定」の次には、②枠組みの設定が重要となります。これは設計図の作成といってもよいでしょう。これについては、前著ではドライバーと表現していましたが、日本語として馴染まないということもあり、「枠組み」としました。

①と②により、必要な情報の枠をあらかじめ設定して情報を収集する、これが最初のポイントです。

③については、本著は未来予測のための技法を焦点にしていますので、説明は割愛しています。

④については、現状分析と未来予測の技法について紹介しています。

⑤は「戦略判断」としましたが、組織モデルでは5-配布です。情報組織は政策の領域まで立ち入らない、すなわち政策を誘導しないことが原則です。専門用語で、これを「インテリジェンスの政治化」を回避する、といいます。

しかし、会社の企業戦略や個人の発展戦略では自分で戦略判断をしなければなりません。未来予測は戦略判断のためにあります。ということは、実は、この⑤から未来予測のサイクルを開始するといってもよいのです。

ようするに、個人が未来に向かって何かの判断をする場合、今現在の立ち位置を明確にして個人モデルの循環サイクルを常に回せ、といことです。

この個人モデルに連接する形で、必要な9つの技法を特定し、図示しました。 次回は、それを紹介したいと思います。

近日、講談社現代新書から拙著が発売(1)

近日、講談社現代新書から拙著『未来予測入門-元防衛省情報分析官が編み出した技法』が発売されます。 発売日は10月16日ですが、すでに「アマゾンサイト」などでは予約受付をしています。

https://www.amazon.co.jp/dp/4065145805

 そこで、今回から数回にわたって拙著の紹介をさせていただきます。

 最初に、本書の作成に至った経緯についてです。 筆者は、2018年4月に社会人向け講座を企画している「麹町アカデミア」の主催で、ビジネスバーソンに対して安全保障に関わる情報分析講座を開催しました。

 2016年出版の『戦略的インテリジェンス入門』をお読みいただき、その講座に参加していただきました「講談社現代新書」の編集長から、「安全保障に関わる情報分析手法を、個人の成長戦略やビジネスに特化した内容に落とし込めないか?」との企画提案をいただきました。  

 その後、同講座を基にした安全保障に関わる物と、〝完全ビジネスパーソンバージョン物〟の二つの執筆作業を同時並行的に進めてきました。

 前者は本年6月に並木書房から『武器になる情報分析力』としてすでに出版しました。 そして後者が今般上梓する『未来予測入門』ということになります。  

  これまでの拙者の「情報分析本」を整理すれば以下の関係になります。

◇『戦略的インテリジェンス入門』 ⇒国家等の情報分析官を対象。情報分析を中心に情報活動解全般を網羅

◇『武器になる情報分析力』 ⇒ビジネスパーソンを対象。主として安全保障に関わる情報分析手法を解説

◇『未来予測入門』 ⇒ビジネスパーソンを対象。情報分析手法を自己発展戦略やビジネスへ適用

 当初は、ビジネスの経験のない筆者が〝完全ビジネスバージョン〟を書けるのか、という不安はありました。たしかに「わが国のIT産業がどうなるか?」「都市の不動産価格がどのように推移するのか?」など、その道のプロたるもの知識が必要なものは私には書けません。

 ただし、ビジネスパーソンの知りたいこと、知らなければならないことを聴取(ヒアリング)したら、彼らが抱える問題は意外にも、ライフスタイルに関するもの、ちょっとした仕事上の悩み、あるいはどんなスキルを身に着ける、どんな職業を選択するのかといった、ごく身近な内容であることに気がつきました。 そこで、現在様々な悩みや課題を持ちながらも、懸命に人生に頑張っている私の子供達やその世代を想定し、私が培ってきた情報分析手法を使ってどのようなアドバイスができるのかについて思案しました。

 そして一つの確信を得たのです。彼らが思考法や情報分析手法をしっかりと身に着けることができれば、様々な課題に直面しても、その解決に向かって自信をもって挑戦できるであろうことを。

 この本をお読みいただければ、自衛官ずっとやってきた筆者が、なぜビジネスパーソン向けの本を書いたのか(書けたのか)、おそらくその〝謎〟が解けると思います。

 つまり、皆様もある思考法さえ身につければ、他領域の問題解決であろうが、他分野の論文執筆であろうが、克復できるということなのです。

 是非とも手に取ってお読みいただければ嬉しく思います。

SNSを開始しました。

 9月半ばですがまだクーラーが離せませ ん。わが国を取り巻く情勢としては、香港デモ、日韓問題と在韓 米軍撤退問題、北朝鮮のミサイル発射などがあります。それにロ シアの東アジアにおける軍事動向にも要注意です。  

 最近、筆者はSNSを始めました。それまで勤めていた会社を 辞めることになり、就活を開始しようとしてサイトの就活募集情 報を調べたら、引きずり込まれるようにあるSNSサイトにたど り着きました。  

 そして、「あなたの友人かも?」ということで、たくさんの私 の知人がリスト表示されました。そこで、知人に友達申請をした り、友達承認をしたりしながら、学生以来ずっと音信不通であっ た旧友とメールでお話ししました。実際にもお会いし、貴重な助 言をいただきました。本当に便利です。  

 SNSといえば、2010年からの「アラブの春」で反政府による動員呼びかけで使用されことが注目されました。その時に主として使用されたSNSは米国企業が運営するものでした。つまり「ア ラブの春」に、米国もしくは米国企業が間接的に絡んでいたとい うことです。  

 筆者は、インテリジェンスの世界においてもSNSの活用が主 流になるであろうとの指摘があるのは承知していました。しかし、 SNSが米企業による世界支配を推し進める戦術のような認識が あり、毛嫌いしていました。  

 また、SNSを利用しての“なりすましメール”や、使用者の 住所を突き止めてのいやがらせ行為を行なうなど、いろいろな被 害も報告されていました。だから、これまでSNSと向き合うこ とを躊躇していたのです。  

 筆者は初心者であり、まだSNSの使い方もよくわかりません し、保全上、何に対してどのように注意すべきかについても認識 不十分です。しかし、もはやSNSを無視していては重要な情報 も集まらないし、情報の発信もできないことを思い知らされまし た。少しずつ勉強していきたいと思います。