強制思考とアナロジー思考を活用しよう!

▼「1県50」とは

筆者が住んでいる近隣に立ち飲み屋があります。そこに、この前から秋田出身の女性が働いています。 ここで秋田の話になったのですが、秋田と言えば、日本一深い湖の田沢湖、横手のかまくら、キリタンポ鍋、桜田淳子(古い話でごめんなさい)くらいしか出てきません。

彼女の出身は田沢湖近くの仙北市だということですが、「それどこ?」という感じです。 しだれ桜の有名な角館町と田沢湖町、それに西木村が2005年に合併して新設された市です。

筆者は、仕事やプライベートで、ほとんどの都道府県に行ったことがあります。残すところ愛媛、高知、和歌山、秋田の4県です。だから、日本の地理には結構、薀蓄がありますが、秋田は苦手の部類ではありました。

以前、私が若かりし頃に情報教育を受けた時のことを思い出しました。ある教官は「初対面で会った人とスムーズに会話するためには、○○県と言えば、最低でも50のキーワードが次々に出てくるようでなければならない」といいました。 のちに、教官になった筆者も「1県50」と称して、学生にこれを紹介し、時々授業で一緒にやったりしていました。

▼強制思考とフレームワーク

この「1県50」にはコツがあります。アトランダムに考えると、だいたい20くらいで途絶えてしまいます。そこで、政治、経済、社会、地理、人物などのフレームワークを使用します。このような思考法を「強制思考」と称し、情報分析における仮説を立てるなど、さまざまな局面で活用されています。

今日ではいくつかの既存のフレームワークが提示されています。

ビジネスにおいて外部環境を分析するためのフレームワークが「PEST」です。これは政治(Politics)、経済(Economics)、社会(Society)、技術(Technology)の頭文字をもじったものです。これは記憶しやすいための“語呂合わせ”です。

なお、最近は、社会の中に含まれる環境(Ecology)を分岐させて「SEPTEmber」(セプテンバー、9月)」と呼称されることが多いようです。

他方、内部環境を分析するためのフレームワークには「3C」(Customer、Competitor、Company)、「4C」(3Cにチャンネル(Channel)を加える)、「4P」(Product,Price, Place(販路),Promotion)などがあります。

「競合分析」(CI、コンペティティブ・インテリジェンス)の祖であるマイケル・ポーターは、自社を業界のなかに位置づけるために業界内部の環境要因を5つの要素にわけて分析する「5フォース」を提唱しました。

国家安全保障の領域では「STAMPLES」(Social、Technological、Environmental、Military、Political、Legal、Economic、Security)があります。

このほか「PMESII」(Political、Military、Economic、Social、Infrastructure、Information)、「DIME」(Diplomatic、Information、Military、Economic)などよく活用されます。

▼アナロジー思考とは

強制思考と並んで、 良質のアイデアを生み出す発想法には アナロジー思考があります。これは類似思考、類比思考ともいい、野球、サッカー、スポーツ、オリンピックというように類似したものを思い出すことです。フレームワークとアナロジー思考を組み合わせることでアイデアが生まれというわけです。

アナロジー思考はは前例、他の業界や商品などから学ぶことですが、これには縦の思考、すなわち歴史的類推法があります。これは、過去に起こった歴史的事象に基づいて未来を予測する方法です。

ハーバード大学のグレアム・T・アリソン教授は著書『米中戦争前夜』の中で「トゥキディデスの罠」について述べています。

アリソン教授はアナロジー思考により大国スパルタを現在の米国、新興するアテネを現在の中国に見立てて「米中はトゥキディデスの罠を免れることができるか?」をテーマに米中関係および国際社会の未来図を描いています。

トゥキディデスは古代ギリシャのペロポネソス戦争を描いた『ペロポネソス戦争史』を遺した歴史家です。つまり、覇権国家スパルタに挑戦した新興国アテネの「脅威」が、スパルタをペロポネソス戦争に踏み切らせたことにアリソン教授は着目し、覇権を争う国家どうしは戦争を免れることが難しいとして、それを「トゥキディデスの罠」と名づけたのです。

アナロジー思考には横の思考もあります。これは現在起きている他の類似した事物や状態に着目することで未知のことを類推する手法です。

この時、すでに生起している先行事象を探すことが重要です。たとえば地方では少子高齢化は進んでいますが、そこでは家屋の過剰、交通機関の閉鎖、市町村の合併、その一方で自動販売車の進出などが起きています。つまり、これの減少が、やがて急速に少子高齢化を迎える都市部の近未図でもあります。

▼越境とリベラルアーツ

このほか発想力を鍛える方法として、最近は〝越境〟という言葉が知友黙されます。これは池上彰氏の造語です。A1時代を生き抜くためには、一つの専門性では太刀打ちできない、でも専門性を二つ、三つと増やすことができればAIの追随を許さない。だから〝越境〟が必要ということになります。

また、学問の世界では「リベラル・アーツ」が注目を集め始めています。この語義は『ウィキペディア』などで調べていただければわかりますが、要するに、専門の世界に入る前に、いろいろなことを横断的(越境的)に学ぶということです。

▼乱読のススメ

今日、勉強はどこでもできます。しっかりと学ぼうとすれば学校に行けばよいでしょうが、経費を節約しようとすればネット講座も利用できます。私は、1か月1300円で「10mtv」を契約しています。

でも、 もっとも手っ取り早い勉強法は読書でしょう。 ある本に、ビジネスパーソンが時代に対応するためには1年に最低50冊を読むことが必要だと書かれていました。かの佐藤優氏は1か月に300冊から500冊だそうです。これは、とても凡人には無理できすが、個人で少し難しいくらいの目標を定めて挑戦したら良いと思います。

なお、筆者は1か月に30冊の読破を目標にして乱読しています。これにはキンドルの「アンリミテッド」を契約 (Ⅰか月1000円) しているので経費はあまりかかりません。ただし、アンリミテッドには制限がありますので、これはあくまでも思考の裾野を広げるための乱読用です。読みたい本や書籍や論文などの執筆用には別途購入していますので、書籍代が1か月1000円で済むという話ではありません。

投稿者:

atsumori

元防衛省情報分析官。1960年広島県生まれ。退職後、ほそぼそとインテリジェンス・リテラシーの普及活動を開始。著書、『情報戦と女性スパイ』『中国戦略“悪”の教科書』、『中国が仕掛けるインテリジェンス戦争』、『戦略的インテリジェンス入門』など。その他、講演、雑誌投稿など。

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