■ 中国の環境意識
米国の地球環境問題を見てきましたが、中国についてはどうでしょうか。中国は急に経済発展をしたので、大気汚染、水質汚濁、森林伐採による砂漠化などといったさまざまな環境問題が発生しています。
私も2000年代初頭と2010年代初頭に中国に行きましたが、空は毎日どんよりと曇っていました。14億人近くの世界一の人口規模を抱えながら、排気規制や廃棄物収集など制度面の規制が追いついていないのですから、様々な環境問題が発生するのも仕方ありません。
PM2.5の問題、黄砂の問題は中国だけの問題ではなく、わが国も直接的な被害を受けることになります。改革開放以降、経済発展、都市化の進展と生活スタイル変化に伴い、生活ごみも増えています。
最近は中国も環境問題に熱心になったとの情報もありますが、今回のコロナ禍やかつてのSARSが最初に発生したのは中国です。この原因が衛生意識が低いとの見方があるように、決して環境問題への意識は高いとはみられません。
■ 中国の環境問題の一因は日本?
中国の砂漠化は日本にも責任があると聞いたことがあります。日本が食べている羊肉というのは、実は中国の山羊(やぎ)だそうです。山羊が木の皮を食べるので木がダメになって砂漠するといわていました(本当かどうかわからない)。また、日本が安い中国産の野菜をどんどん買うので、中国の農家は野菜にたっぷり農薬を掛けるといいます。この話はなんとなく分かる気がします。
要するに、グローバル社会では他国の問題点は自ら発生していることが多々あります。少し前まで、日本の廃棄される7割のプラスチックが中国やベトナム、タイ、マレーシアに輸出されていたといいます。そこで適切に処理されるわけではなくゴミ山になり、それがまた環境問題を引きこ起こす、悪の循環繰り返していたとされます。
■中国は世界最大の温室効果ガス排出国
中国は世界最大の温室効果ガス排出国です。習氏は2016年9月にオバマ米大統領(当時)とともに、地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」批准を正式発表し、その成果を世界にアピールしました。
中国はこれまで温室効果ガスの規制には消極的でした。まだ、中国は開発途上国なので規制には応じられないという姿勢を取り続けていました。しかしながら、2009年のCOP15あたりから方向性を変えました。
経済のグローバルを進めていくうえで、温室効果ガスの旗振りもやらなくてはならないと認識したことが第一の理由とみられますが、国自身の大気汚染などの環境悪化も国内安定から必要になっています。
2019年には、コロナ禍が発生した武漢で新たなごみ焼却場の建設に反対する環境デモも生起しています。この住民デモはSNSで流されるのですぐに問題となります。中国の大規模抗議活動の1/3は環境汚染関連とされます。つまり、共産党政権のアキレス腱というになります。
■中国は環境問題を政治利用
トランプ氏はパリ協定から離脱しました。2020年はコロナ禍で、トランプ氏による対中包囲網の形成の試みが進展しました。これに対して、中国は、温暖化対策一つの牽制として、国際社会の主導権を握り対抗する構えを見せまたといえます。つまり、環境問題が中国によって政治利用されました。
中国は2020年の国連総会で、2030年までに減少に転じさせ、2060年までに温室効果ガス排出を実質ゼロ(カーボンニュートラル)にする宣言しました。中間目標として、2035年にはガソリン車を撤廃するともいいました。しかし、技術的な問題から、2035年のガソリン車の撤廃は達成できるかは不透明です。
香港問題などをめぐり欧州連合(EU)が対中警戒を強めている中、中国は欧州側が伝統的に重視している気候変動対策を梃子に関係回復を図ろうとする思惑もうかがわれます。習氏は、長期目標をいかに実現するか明確にしていませんが、「各国は新たな科学技術革命と産業変革の歴史的なチャンスをつかむべきだ」と強調し、環境対応の製品・ビジネスの拡大を進めようとしています。